丹青社は、非常に地味な銘柄で、国内の機関投資家も普段からウォッチしている銘柄とは言い難い。だが、2014年から、経営スタンスを大幅に修正している。おもに商業施設の展示ディスプレイを手がけている同社は、利益率の低い注文も受けていたが、それを改め、採算性重視に舵を切った。その結果、ROE・ROA・EPSのすべてが劇的に改善し、株価はTOPIXを大幅に上回って上昇している。常勝ファンドマネージャーの個別銘柄に対するリサーチ力のレベルの高さが感じられる。
私が長年取材をしている、世界最大手クラスの運用会社の女性共同創業者がこんな話をしてくれた。
10年ほど前、日本の重厚長大産業の代表的な企業の株主総会に出席したとき、代表取締役に、ROEについての目標を聞いたという。すると、その代表取締役はROEについてまったく知らず、答えられなかったという。しかし、その企業の直近の株主総会に出たところ、ROEは経営目標の一つに掲げられるほど変化していた。
これはほんの一例だが、その女性は、「私が他で経験したケースを含めて、日本企業の経営者の意識は、ここ数年で大きく変わってきた。まるで明治の“文明開化”を思わせるわね」と笑顔で語った。この感想は、外国人投資家に共通する見方といっていい。 アベノミクスや日銀の金融緩和政策に対しての評価同様、外国人投資家が日本株を買う理由には、日本企業の底流にある「文明開化」に等しい変化と挑戦があることも見逃せない。
※マネーポスト2015年新春号