「カワイイ」オーストラリア出身の女装パフォーマー
女装姿で街を歩く男性が増えているなど、錯覚だろうと思うかもしれない。だがおそらく、ほとんどの人が気づいていないだけなのだ。都内で働く男性美容師は、最近は女装している男の子が増えたのを実感している。
「僕は仕事でメイクをしているから分かるのですが、本当に女装している男の子が増えたなと思います。パッと見には、細いし、かわいくメイクしているからすれ違った人のほとんどは女の子だと思っているんじゃないかな。メイクをとったときの骨格が頭に浮かばないと気づけないと思う。髪をカットする接客をしていても、今は若い男の子ほど日焼け止めや保湿に気を配っていて、女装しなくてもかわいらしくなっているなと思うことが多いです」
カジュアル化した女装はさらにすすみ、最近ではカップルで女装スタジオを訪れ、おそろいの衣装で撮影をすることも少なくない。女装をきっかけに交際に発展した男女もいるそうだ。男女がお互いに似合う服やメイクを選びあうことが親密なコミュニケーションを生んでいるらしい。
現在のようにカジュアルに女装に取り組めるようになったのは、インターネットの発達と、日本の「カワイイ」文化のおかげだろう。
「インターネットのおかげで、興味はあるけれど知るすべがなかった人たちのところに女装の情報が届くようになりました。若い子はメイクも動画で自習してますね。それと、女装が『カワイイ』と肯定されるようになったことも大きいと思います。女優さんやモデルみたいな美しさはなくても、その人のいじらしさがとても『カワイイ』姿に見せていたり、体型はものすごく男性的なんだけれど、内面の乙女らしさが『カワイイ』につながったり。
意外に思われるかもしれませんが、女装するようになると、絶対に女性にモテます。お肌のお手入れとかヒールが高い靴で歩くこととか、女性が手間をかけて努力していることを感じて、普段から思いやれるようになるからです。そして、仕事もしっかりできて、頭が良い男性ほど女装の完成度も高い。男子校の女装がネットでよく話題になりますが、偏差値が高い高校ほどレベルの高い女装になりますね」(前出・立花さん)
日本は世界でもっとも先鋭的に「カワイイ」文化を邁進した結果、内面を反映する、本当の意味でのファッション性に目覚めた。とにかく野暮ったさが目立っていた日本人男性のファッションセンスは、あと数年で世界がうらやむ水準に達するのかもしれない。