国際情報

中国南水北調プロジェクト完成 健康被害や環境破壊の恐れも

 中国北部の水不足を解消するため、南部の水を北部に運ぶという南水北調プロジェクトのうち、中央ルート1432キロメートルが12月中旬完成し、正式な送水が始まった。2003年に工事を開始してから11年、中央ルートだけの投資額は2013億元(3兆8200億円)。これに、現在工事中の西ルートと南ルートを加えると、総投資額は5000億元(9兆5000億円)にも達する巨大プロジェクトだ。

 しかし、問題は河川などの水質汚染が深刻なことで、飲用に耐えうるかどうか、最悪の場合、汚染水を飲んだ住民らに健康被害が多発する可能性も指摘されている。

 プロジェクトは1952年10月、毛沢東主席が「南方には水が多い。北方は水が少ない。もし可能ならば、(南方の)水を借りればよい」(南方水多,北方水少,如有可能,借點水來也是可以的)と語ったことから、中国政府が正式に検討を始めた。その結果、長江(揚子江)の上流、中流、下流からそれぞれ取水し、西北地区と華北地区の各地に水を導く3ルートの建設が決定した。

 3ルート合わせた総送水量は448億立方メートル、水の供給を受ける地区の総面積は145万平方キロメートル、受益者の総数は4億3800万人とまさにけた違いの規模だ。

 問題は水質汚染のほか、プロジェクトのために豊富な水量を誇っていた河川が逆に干上がる現象が各地で現れているほか、3ルート上の住民が立ち退きを迫られ、生活が困窮する例もみられていることだ、

 さらに反対派の専門家らは「プロジェクトは生態系を破壊する可能性があり、住血吸虫症の北上や、土壌のアルカリ化、河川水資源の不均衡、水生生物の減少及び絶滅などが危惧される」と指摘している。

 また、東ルートでは江蘇省楊州市で長江から取水した水を歴史的建造物である「京杭運河」を活用するが、この運河はよく知られているように、随王朝(581 ~618年))の第2代皇帝の煬帝が610年に完成させたもの。総延長は2500キロメートルと当時としては巨大なプロジェクトで、土木工事に徴用された国民の不満が高まり、隋王朝が滅亡する契機となった。

 今回の南水北調プロジェクトも約10兆円もの莫大な資金がかかっていることや、健康被害や生態系の破壊などの問題が多発するようだと、習近平政権も隋の二の舞になりかねないとの可能性も指摘されている。

関連キーワード

トピックス

大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
(写真右/Getty Images、左・撮影/横田紋子)
高市早苗首相が異例の“買春行為の罰則化の検討”に言及 世界では“買う側”に罰則を科すのが先進国のスタンダード 日本の法律が抱える構造的な矛盾 
女性セブン
村上宗隆の移籍先はどこになるのか
メジャー移籍表明ヤクルト・村上宗隆、有力候補はメッツ、レッドソックス、マリナーズでも「大穴・ドジャース」の噂が消えない理由
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン