国内

異物混入公表渋る背景 クレーマー増加や数字ひとり歩き危惧

 昨年末から相次いでいる食品への異物混入報道。何をもって異物とし、公表する基準は何かとなると曖昧さがつきまとう。

 マックナゲットやフライドポテトから異物が見つかった日本マクドナルドでは、1月7日の記者会見で青木岳彦取締役が、「お客さまには申し訳ないが、公表する必要はなかった」と釈明。すると、健康被害がなければ公表しないとの方針が無責任だと批判された。

 企業が異物混入の公表を渋る背景には、クレーマーの増加がある。保健所の所長も務めた奈良県立医科大学の今村知明教授(公衆衛生学)がいう。

「異物混入の訴えがあり、保健所が調べると被害者がウソをついていたケースも多い。企業は虚偽のクレームと本当の混入被害をなかなか判別できない。また、責任の所在がはっきりしない場合も客の責任にはできないので立場が弱い」

 クレーマー問題に加え、企業には「公表トラウマ」がある。食の安全・安心財団事務局長の中村啓一氏はこう語る。

「2006年に原材料の賞味・消費期限切れを起こした不二家は記者会見で追及され、異物混入のクレームが年1700件あったことを明かした。この数字が大々的に取り上げられて大きなイメージダウンとなり、業績が急激に落ち込んだ。全国3000店のマクドナルドであれば、1店舗に年1回のクレームで年3000件になる。企業は数字のひとり歩きを恐れて公表に踏み切れない」

 不二家のケースでは、テレビのワイドショーなどが、事実を正確に把握しないまま徹底的な不二家叩きを展開し、多くの店舗が潰れた。食品業界は公表と報道の恐怖に震え上がった。

 もちろん異物混入が健康被害を招くケースには法的にも明確な告知義務があり、即座に公表して商品を回収すべきなのは当然だ。

※週刊ポスト2015年1月30日号

関連キーワード

トピックス

本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
2021年ドラ1右腕・森木大智
《悔しいし、情けないし…》高卒4年目で戦力外通告の元阪神ドラ1右腕 育成降格でかけられた「藤川球児監督からの言葉」とは
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
この笑顔はいつまで続くのか(左から吉村洋文氏、高市早苗・首相、藤田文武氏)
自民・維新連立の時限爆弾となる「橋下徹氏の鶴の一声」 高市首相とは過去に確執、維新党内では「橋下氏の影響下から独立すべき」との意見も
週刊ポスト
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン