ライフ

関大准教授のNZ人「武士道は日本の伝統文化でなく世界遺産」

 ドイツの建築家、ブルーノ・タウトが京都の桂離宮を訪れた際の第一声が「泣きたくなるほど美しい」だったことは有名だが、かように“和の神髄”について、外国人の目を通して教えられることは少なくない。

 関西大学国際部准教授でニュージーランド人のアレキサンダー・ベネット氏は、日本で剣道に出会い「無限」を知ったと語る。

 * * *
 剣道、柔道など武道は、スポーツとしての側面ばかりに目がいきがちです。私は、武道はスポーツだとも思っていますが、技術の向上や試合の勝ち負けの話にとどまるものだとは思っていません。教育手段という面もあるし、武道は生涯かけて極めていく“道”なんです。

 試合は目的ではなく、確認の場です。勝っても負けても反省することは山ほどある。同時に相手に感謝もする。勝敗は時の運もあり、結果が全てではない。勝っておごらず、負けて悔やまず。それは精神文化である武士道に通じます。

 真剣勝負を由来とする剣道は、勝ち負けは生死を意味する。勝った時は、相手の命を奪ったとき。だからそんなに喜ぶべきものではない。

 武士道の解釈は様々ですが、忠義礼節という倫理的側面を取り沙汰される事が多い。いわく、武士道こそ日本人の精神だと。正直、私に日本人としてのアイデンティティは関係ありません。

 それよりも、武士道は普遍的な人間の知恵であると思います。国籍関係なく、もっとベーシックなものだと。世の中には“武士道論”が記された書物があふれていますが、武士道とは侍の道。身を捨てて生きるか死ぬかから生まれるのが武士道です。実践から体得したものでなければ、はっきり言って空論です。

 私は、武士道を理解する上で剣道ほど適したものはないと思っています。

 剣道は武士文化の流れを汲んでいる。たとえば私が大事にしている言葉に「残心」があります。これは、攻撃のあとや勝ったあとでも気を抜かず、相手の反撃に警戒し、油断しないこと。真剣勝負だからこその心の持ちようがまだ生きているのです。

 ひいては周囲への心配りや、起きたことの原因を他者に求めない心構えにつながります。忠義にとどまらず、感情をコントロールし己を律する鍛錬こそ、武士道の本質なのではないでしょうか。

 武士道は日本の伝統文化などではなく、むしろ日本にとどまらない世界遺産なのです。

●取材・構成/大木信景(HEW)

※SAPIO2015年2月号

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト