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イスラム国 日本に当事者能力ないこと見透かし倒錯要求をした

 2月1日、イスラム国は湯川遥菜氏に続いて後藤健二氏を殺害したとする動画を公開したが、今回の日本人人質事件で、イスラム国側が湯川氏の殺害画像を1月24日深夜に公表する前の段階で、外務省関係者は政府が後藤氏1人に絞って交渉していることを匂わせ、得意な様子さえ見せていた。

「湯川さんはすでに死亡したという情報があり、生存の可能性は低いだろう。彼らはジャーナリストであって英語ができる後藤さんの方が交渉するうえで価値が高いと考えているようだ。いま、ヨルダン政府が複雑な交渉を続けている」

 ところが、イスラム国のほうが上手だった。湯川氏殺害後に公開した映像では、あくまで後藤氏と自爆テロ未遂犯としてヨルダンで服役中のサジダ・リシャウィ死刑囚の1対1の交換を持ち出し、「日本政府はヨルダン政府に圧力をかけろ」と要求した。日本政府がすべてをヨルダンに押しつけることができないようにクギを刺してきたのである。

 安倍晋三首相がヨルダン政府に「後藤氏を救うために死刑囚を釈放してくれ」と頼めば、福田赳夫・元首相の轍を踏むことになる。かつて福田氏はダッカ・ハイジャック事件(1977年)で「人命は地球より重い」と述べて、犯行グループの要求通りに獄中の日本赤軍を釈放して身代金600万ドル(当時のレートで約16億円)を払い、国際社会から「テロに屈した」と厳しい批判を浴びた。

 ヨルダン政府としても、50人を殺したテロ事件の犯人であるリシャウィ死刑囚を簡単に差し出すわけにはいかない。楽観論を嘲笑うようにイスラム国はハードルを上げ、日本政府はその手口に翻弄された。

 日本で「ヨルダン軍パイロットとセットで後藤さんを解放させる」という交渉が進んでいるとの報道が出る中で、ヨルダン政府が「パイロットの解放が先」という声明を出した経緯も、日本がただヨルダン側に「お願い」するばかりで積極的な動きをしてこなかったことの証左だった。

 イスラム国側は日本に当事者能力がないことを見透かして、ついには「後藤氏と死刑囚の交換に応じないなら、ヨルダン軍パイロットを殺す」という倒錯した要求を始めた。

※週刊ポスト2015年2月13日号

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