ビジネス

ヤマト運輸メール便廃止「顧客の容疑者リスク放置できない」

「信書」とは何か知っている国民はほとんどいないのではないか。

〈「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法及び信書便法に規定されています〉(総務省「信書のガイドライン」より)

 これを読んでもまだわからない。

 ヤマト運輸は「クロネコメール便」のサービスを2015年3月末で廃止すると発表した。同サービスは、書籍・雑誌やカタログ、ダイレクトメールなどの「信書以外の文書」を82円または164円で日本全国に送付できるサービスだ。受領印不要でポストに投函されるため、受け取り人が不在でも荷物が届く。

 メール便は2013年度には21億件で1200億円を売り上げた。これはヤマトホールディングスの売上高全体の1割弱にのぼる。代替サービスを提供するとはいえ、同社はこの大事業を諦めることになる。

 なぜメール便が廃止されるのか。キーワードが冒頭の「信書」だ。バイク便などを除き、全国展開するヤマトのような企業は、「ポストを全国に10万本設置」しなければ信書を送ることが認められていない。その規制により信書送達は「日本郵便の独占状態」なのだ。ヤマト運輸広報課が説明する。

「手紙、請求書などは信書にあたります。それらを違反の認識なしにメール便で送ってしまい、郵便法違反で事情聴取されたり書類送検されたりする事例がここ5年間で8件ありました。お客さまが容疑者になるリスクを放置できないと判断し、メール便を廃止する決断に至りました」

 そもそも、なぜ信書は日本郵便しか取り扱ってはいけないのだろうか。

 建前として「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供するため」に信書の送達を独占するとしている。が、82円で全国に届くメール便が実現できている以上、日本郵便が独占する理由はない。

『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館刊)の著者で政策工房社長の原英史氏が語る。

「メール便が廃止され消費者の選択肢が減った。日本郵便の縄張りを守るために消費者の利便性を奪う、典型的な“おバカ規制”です」

 日本郵便広報室に聞くと「コメントを差し控えます」というのみだった。メール便は廃止するものの、ヤマト運輸広報課はこうもいう。

「お客様の利便性を損ねる規制は緩和すべきという考えは変わっておりません」

 安倍政権が本気で規制緩和を進めるというなら日本郵便の特権を奪うべきだ。

※週刊ポスト2015年2月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン