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領土問題抱えるベトナム 日本と協調し中国の横暴阻止を期待

「日本よ、ともに助け合おう」

 ベトナム・ホーチミン在住の日本人ジャーナリストの中安昭人氏は、中国の暴挙に対して怒るベトナム人からそう呼びかけられたという。

 ベトナムが領土問題で緊迫したのは2014年5月。中国とベトナムが領有権を主張する西沙諸島周辺で、中国が石油掘削作業を強行しようとしたことで、都市部などで反中デモが起こった。ベトナム南部の工業地区ではその数はおよそ2万人にまで達した。

「中国との領土問題を抱えるベトナムでは、尖閣で同様の問題を抱える日本を同胞と見ている。彼らはアジアの同胞と協調して中国の横暴を止めたいと考えているのです」(中安氏)。

 ベトナム政府は当初、この反中デモを事実上容認していたが、数日後に対応を一変させた。首相自らが携帯電話を使い、国民に自制を促すメッセージを一斉送信した。多くの国民は、「中国に弱腰だ」と失望した。

 こうしたベトナム政府の対応は過去、国内に進出した中国企業に対しても同様だ。2008年、中部・ダックラック省とダックノン省の境界に中国企業がボーキサイト工場を建設した。

 現地では中国の進出を警戒し、開業前に100万人規模の反対署名がベトナム政府に提出されたにもかかわらず、政府はこれを受理しなかった。数千人と目される工場従業員に現地住民は雇用されておらず、すべて中国人だ。

 中国人労働者については現地で「純粋な労働者ではなく、訓練を受けた職業軍人ではないか」とも囁かれている。ホーチミン市の自営業、グエン・ディン・チュンさんは憤る。

「我々、反対派が主張しているのは“ベトナム人を雇え、雇用を奪うな”という小さな問題ではない。ここにいる中国人が本当に軍人だとするなら、ベトナムと中国の関係が悪化し武力蜂起が発生したときに、ベトナムはまた南北に分断されかねない」

 ベトナムに詳しい別のジャーナリストが背景を説明する。
 
「ベトナムにとって中国は最大の輸入相手国であり、国力の弱いベトナムはさまざまな面で中国製品に依存せざるを得ない。また、政府は中国との関係悪化によって情勢不安になることで他の外国資本が国外に逃げてしまうことも恐れている」

※SAPIO2015年3月号

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