国際情報

大正期の日本 中国に3兆円相当の円借款供与を踏み倒された

 中国がいまになって過去の債務を取り立てようとするなら、日本こそ中国に借金返済を迫るべきだ。2014年4月、中国は戦前の汽船賃料未払いを理由に商船三井の船を一方的に差し押さえる暴挙に出た。同社が中国に供託金として払った額は40億円とも言われている。中国は戦前の賃貸契約について「日中共同声明の条文に拘束されない」と開き直ったが、その理屈で言えば日本も中国に踏み倒された円借款の返還を請求することができるのだ。

 満州事変から遡ること20年、大正期の日本は中国に対して3億円(現在の価値で3兆円)の円借款を供与していた。ところが中国は、1923年の関東大震災後から支払いの遅延を始め、1933年3月に発生した三陸大地震の4か月後に借款の踏み倒しにかかった。日本の国難に乗じた卑劣な手口だった。1933年7月30日付の大阪朝日新聞は、「三億の対支債権 実力で回収を決意」との見出しでこう報じている。

「対支(中国)借款はいわゆる西原借款などの政治借款と称されるものを合算すれば今や元利合計10億円にも達しているが、この政治借款について南京政府は全然責任なきが如く態度を執っており……」

 当時、日本の軍部は厳重に償還を督促した上で、担保の差し押さえ、最悪の場合は実力行使を検討していたが、その後の満州事変、上海事件、日中戦争に至る過程で対中円借款は結局うやむやにされた。

 だが、戦後も日本は中国に累計3.3兆円もの借款を供与し、貸付残高は1.6兆円に上る。2005年、北京では日本による新規円借款停止の通告に端を発した大暴動が起き、2010年に借款打ち切り交渉が行なわれると、中国の偽装漁船による海保巡視船激突事件が起きた。日本が毅然とした態度を取らなければ、無法国家は再び恫喝により円借款の踏み倒しにかかるかもしれない。

 中国がいつまでも過去にこだわるなら、日本も黙っていない姿勢を示したほうがいい。

●文/水間政憲(ジャーナリスト)

※SAPIO2015年3月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

昨年、10年ぶりに復帰したほしのあき
《グラドル妻・ほしのあきの献身》耐え続けた「若手有望騎手をたぶらかした」評 夫・三浦皇成「悲願のG1初制覇」の裏で…13歳年上妻の「ベッドで手を握り続けた」寄り添い愛
NEWSポストセブン
東京・表参道にある美容室「ELTE」の経営者で美容師の藤井庄吾容疑者(インスタグラムより)
《衝撃のセクハラ発言》逮捕の表参道売れっ子美容師「返答次第で私もトイレに連れ込まれていたのかも…」施術を受けた女性が証言【不同意わいせつ容疑】
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人の時効が消滅》「死ぬ間際まで與一を心配していました」重要指名手配犯・八田與一容疑者の“最大の味方”が逝去 祖母があらためて訴えた“事件の酌量”
NEWSポストセブン
白鵬に賛同する勢力がどんどん増えていく
《元横綱・白鵬のもとに“ヤメ関取”が続々集結》元・旭鷲山、元・把瑠都が役員になった国際相撲連盟と「世界相撲グランドスラム」構想の関係
週刊ポスト
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン
愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
新井被告は名誉毀損について無罪を主張。一方、虚偽告訴については公訴事実を全て認めた
《草津町・元町議の女性に有罪判決》「肉体関係を持った」と言われて…草津町長が独占インタビューに語っていた“虚偽の性被害告発”
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン