今、世間では夫から妻ではなく、妻から夫へのDV(ドメスティック・バイオレンス)が深刻化している。警察庁の調査では、DV被害に関する相談件数は約10年間で女性1.4倍に対し、男性は4.1倍に増加している。2010年まで1000件程度で推移してきた男性の相談件数は、2013年には3281件と3倍超になった。
「妻のDVのきっかけは夫の浮気の発覚や、夫の両親との同居話のストレスといった具体的な引き金がある場合と、40代後半から50代女性に多い更年期障害のイライラから起こる場合とに大別されます」
離婚110番の代表カウンセラー、澁川良幸氏はこう語る。
「しかし引き金が何であるかはともかく、最近は妻が簡単に暴発する傾向があります。理由はDV防止法の改正で男性の力にNOを突きつけやすくなったこと、そして女性の社会進出が盛んになって男と女は対等なんだという意識が浸透したことが挙げられます。
また親世代が以前よりも裕福なため、たとえ離婚して出戻っても、住居も経済的援助も確保しやすい。夫に対して開き直りやすくなったことで、行き過ぎた暴言、暴力へ発展するようになったのではないでしょうか」(澁川氏)
一方で男性は離婚に対する恐怖心が強いようだ。ある離婚相談所によると、DV被害を相談する男性の6~7割が、離婚ではない改善策を望むという。
かつて妻から腰を踏みつけられたり、何度も蹴られたりしてヘルニアを患った50代の会社員男性も離婚という選択肢は考えていないと語る。
「子供はまだ学生で手がかかるので、子供のためにも離婚したくない。それに一度は愛した女性だし、変わってくれるんじゃないかという思いもあります」
では、妻のDVにはどう対処すればいいのか。澁川氏が語る。
「よくある“妻に対して感謝の気持ちを言葉にする”という方法は、DVに限っては逆効果になりやすい。激高している妻に“俺が悪かった、キミの苦労を気づかせてくれてありがとう”といっても、“舐めてるのか”とさらに火に油を注ぐことになります」
澁川氏によれば、とにかく距離を置くことが最善の策だという。
「妻のDV支配下では妻の顔色を常に窺うために、なかなか自分の状況を客観視できない。距離を置いてみると妻の具体的なイライラの原因も見えてくることがあります。別居に踏み切れなくても、少しの期間距離を置いたことで妻のDVが改善したケースもあります。
例えば週末に家にいる最中に妻から暴言や暴行を受けていた夫が週末にダブルワークに出たというケースでは、妻から離れて働くことで夫は気分転換でき、妻は収入が増えて落ち着きを取り戻しました」
※週刊ポスト2015年3月6日号