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店員の勘違いで釣り銭を多く受け取ったら、返金すべきなのか

 昨年12月に奈良県のコンビニエンスストアで、店員の勘違いによってお釣りを受け取りすぎた男性が、その後詐欺罪で逮捕されるという事件があった。約14000円の買い物に15000円を出したところ、バイト店員が60000円を渡されたと勘違いし、46000円を渡したのだ。

 小銭単位の間違いぐらいなら経験がある人もいるだろうが、店員の勘違いでつり銭を多く受け取ったら、法律的に問題はあるのか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。

【相談】
 コンビニで1万1000円の公共料金を支払ったとき、店員が9000円のおつりをくれました。1万円札と1000円札を出したのに、1万円札を2枚受け取ったと勘違いしたようです。妻に自慢すると、それは詐欺だといわれました。落ち度は店員にあるのに、それでも返金しないと罪になりますか。

【回答】
 良い子ぶるのは恥ずかしくても、もらい過ぎがわかった以上、金額も大きいのですから、返金するのは当然のことでしょう。

 ともあれ、勘定を間違えた店員が、つり銭を渡そうとしたときに、その場で計算間違いに気が付いたのに受け取ってしまうと、刑法の詐欺罪に当たるかが問題になります。いわゆる「つり銭詐欺」です。

 詐欺とは、人を騙して金品をとることですが、この「騙す」とは、相手を誤解させ、その誤解に乗じることです。通常の場合、「誤解させる」ため、積極的に嘘をいうのが詐欺ですが、つり銭詐欺では、店員が間違うのであり、客がこの「嘘」をつくわけではありません。

 しかし、そうであっても、店員の間違いに気付いた以上、それを告知する義務(作為義務)があり、これをしないのは告知義務に違反しますし、不作為による詐欺行為であるという考えが有力です。

 ただし、それは契約関係などに基づいて、当事者間に特別の信頼関係がある場合のことで、買い物しただけの店との関係では、作為義務はないとする考え方もあり、この考えに立てば詐欺にはなりません。

 ですが、意思によらず無くしてしまった物を取ってしまう「占有離脱物横領」の罪が成立することになります。もっとも、家に帰ってから気が付いたとすれば、他人の物を取るという意識はなかったのですから、これらの罪には当たりません。

 ただ、認識いかんに拘わらず、あなたにもらい過ぎのおつりを保有する権利は、まったくありません。ばれたら、知らなかったと言い訳して通用するか心配ですし、店から返金請求を受ければ返す義務があります。

 防犯カメラなどで、あなたへのつり銭間違いが確認される可能性は否定できません。なにより店主から責任を追及される店員が気の毒ですし、急いで返すべきです。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2015年3月13日号

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