除染手当は正式には「特殊勤務手当」と呼び、環境省が発注する除染特別地域(福島第一原発から20キロ圏内を中心とする区域)で除染にあたる作業員に支払われる。簡単にいえば、被曝の危険に晒されながらの作業に対する特別な上積み報酬である。その額は1人1日あたり1万円(一部区域では6600円)となっており、環境省は「労賃とは別に、作業員本人に支払われなければならない」と定めている。
安藤ハザマは前述の見積もり書のように除染手当を含めて環境省に請求しているが、いずれかの段階でピンハネされ、2次下請けには支払われていないという証言だ。
清藤代表によれば、海渡建設が立て替えた除染手当の総額は762万5000円にのぼるという。
「週6日、約3か月間にわたって1日18~20人、少ない日でも7人ほどが働きました。雨や雪などで作業しない日もあり、また半日作業(4時間未満)だと6000円になるので、それを計算すると762万5000円になります。
直接契約した(1次下請けの)O社や安藤ハザマに求めても支払ってもらえず、環境省やゼネコンを所管する国交省にも相談しましたが、『民間同士の問題』として取り合ってくれませんでした」
作業に取りかかる直前の昨年1月にO社から海渡建設にFAXで送付されてきた「土木工事見積条件書」には、特記事項として「特殊作業手当は別途計上し、施行単価中に含めてはならない」「人員数については、業務完了後に実績にて精算する」と記されていた。
「それが、いつの間にか我が社に支払われた額の中に含まれているという話になっていました。『(除染手当は)業務完了後に実績にて精算する』という規定は反故にされたのです」(清藤代表)
O社から海渡建設に支払われた額は除染手当の総額(762万5000円)すら下回っており、「支払い金額に含まれている」という主張には無理がある。
環境省も逃げることはできない。過去にも複数の業者で除染手当の未払いが発覚し、同省はきちんと手当を支払うよう指導する姿勢を打ち出しているからだ。
※週刊ポスト2015年3月20日号