アメリカによる日本支配は在日米軍基地や、外交政策に顕著な対米追従だけに表われるのではない。政治家、官僚、知識人、メディア……日本人の言語空間は、戦後ずっと「観念的に」アメリカに操作されたままであると指摘するのは、京都大学大学院人間・環境学研究科教授の佐伯啓思氏だ。
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アメリカが民主主義や自由競争、個人主義といった理念を日本統治の柱としたのは、それらの理念をグローバル化することがアメリカの国益だからである。「道徳的に正しい」からではない。
それに気づかないまま、日本はアメリカに盲従し、隷属する国家の道を歩んできた。1980年代に日本がアメリカと肩を並べる経済大国に成長し日米経済摩擦が起きると、日本は1985年のプラザ合意により日米経済協力体制に組み込まれた。
1989年に貿易不均衡を是正する目的で始まった「日米構造協議」は英語で「Structural Impediments Initiative」といい、アメリカによる「イニシアティブ(先導、主導)」が宣言されている。日本は構造的に問題があるから指導してやると言っているのだ。そうした実態をうまく伏せた訳語の「協議」を、日本側の経済学者もメディアも自ら進んで使ってきた。
1990年代以降、バブル経済が崩壊すると、竹中平蔵を筆頭にエコノミストや官僚、経済ジャーナリストが「構造改革」を唱え、日本的な集団主義や会社に忠誠を尽くす日本型経営を否定し、市場原理を優先したグローバリズムが日本を救うと主張した。
こうしたアメリカ盲従の姿勢は、2000年代に入ると別の形で現われてくる。