澤田氏は学生時代に西ドイツへ留学して4年半を過ごし、その後も世界各国を旅した。帰国後、まだ日本になかった格安航空券販売やパッケージ旅行の販売を始めたことが、H.I.S.の始まりとなる。彼は自身のそうした起業家としての原点を思うとき、20代で「世界の多様性」を感じ取ったことが、新たな挑戦を好む姿勢を培ったと感じてきた。

「やっぱり僕には新しい創造的なことにチャレンジしたい、という気持ちがある。市長から再三の依頼を受けたことで、その気持ちが抑えられなくなったというのも一つの理由でしたね」

 当時、人も疎らで閑散としていたハウステンボスを訪れると、彼は赤字続きで疲弊している従業員たちを一堂に集めて言った。

「ここをみんなで黒字にしましょう。僕について来れば、間違いなく半年か一年で黒字になる。だまされたと思って一緒にやってほしい」

 彼が黒字化に当たって掲げたのは、「2割の経費削減・2割の売り上げアップ」という単純明快な目標だった。具体的にはディズニーランドの約2倍ある敷地の3分の1を無料化し、外部の飲食店やショップを誘致することで経費を大きく削減。フリーゾーンには集客力のあるコミック「ワンピース」の海賊船を配置するなど、集客の磁力を作り出した。

 次に広大な敷地を活かし、限られた予算の中で「日本一」や「東洋一」にこだわったイベントを繰り返した。LEDで場内のあらゆる建物や運河をライトアップする冬のイベント「光の王国」、オランダに因んで650種のチューリップを用意したチューリップ祭や「花の王国」。これらは現在に至るまで、恒例のイベントとして来場者数の増加を支えている。

撮影■田中麻以

※SAPIO2015年4月号

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