国内

拘束介護で改善勧告の高齢者施設 逆ギレ反省文を北区に提出

 高齢者用マンションの入居者が、ベッドに縛られたり、部屋に閉じ込められる「拘束介護」を受けた──。東京都北区で判明した衝撃的なニュースが、意外な展開を見せている。

 問題となっているのが、ヘルパーやケアマネージャーをマンションに派遣する事業所を運営する医療法人「岩江クリニック」。昨年11月、朝日新聞の報道を受けて東京都が立ち入り検査をしたところ、入居者の多くが拘束されていたとされる。

 都は介護保険法に基づき改善を勧告。北区も高齢者虐待防止法に基づき計95人が拘束されて虐待を受けたと認定、改善指導していた。

 しかし岩江クリニックが北区に出した改善計画書は“逆ギレ”というべき内容だった。

〈以降、患者(利用者)の生命・身体を保護するために必要やむを得ないと医師が判断して行う身体拘束については、(中略)医師または医師の指示を直接に受けた看護要員等が行うこととします〉

〈本件についての東京都北区のご指導は、(中略)今後一切、これに協力いたしません〉

 あくまでも身体拘束は医療行為だから批判にはあたらない、今後はヘルパーではなく医師や看護師が行なうからいいだろうと主張したうえで「北区のいうことは聞かない」と真正面からケンカを売ったわけだ。北区役所健康福祉部の担当者がいう。

「問題の施設は高齢者マンションで病院ではありません。虐待の事実が判明すれば、区としては動かざるを得ない。ただし高齢者虐待防止法は罰則がなく、違反しても行政指導しか行なえない。強制措置はとれないが粘り強くやっていく」

 介護問題に詳しい大石剛一郎弁護士がいう。

「過去の判例から見ても、身体拘束は原則として認められていない。生命や身体が危険にさらされた場合など、やむを得ない時に最小限の時間に限って取られる措置です。“医師や看護師だったら自由にやってもいい”という話ではない」

 同マンションは要介護度4~5の入居者ばかりを集めていたという。意思表示も難しい老人が多かったために、こうした介護がまかり通ってしまっていた実態があった。ただし、介護に携わる人々からは、行政の怠慢を指摘する声も出てくる。

「こんな事例が出てくるそもそもの原因は、50万人超といわれる特養老人ホームの待機者問題がまったく解消されていないから。低い賃金でヘルパーが集まらず、特養も受入数を増やせずにいる。行政が抜本的な改善策を出さなければ、何度摘発しても同じような業者は出てきます」(特養に勤務するヘルパー)

 騒動の渦中にある岩江クリニックの話を聞こうと何度も取材を申し込んだが、「担当者が不在なので」とけんもほろろ。本誌にも逆ギレ気味の対応だった。

※週刊ポスト2015年3月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン