「いつもこんな感じです。皆さん、店を大事にしてくれていましてね。だからこそ、お客さん同士もすぐに仲良くなってしまうんですよ」と、3代目主人の田西淳三さん(70歳)・久子さん夫妻。
久子さんは東京・麻布の菓子屋の娘さんで、新川屋酒店の近所にあった支店で働いていた。「商店街の慰安旅行で親しくなったんです。そういえば、結婚50年になるんだ。今年の9月で金婚式ですよ」との照れ混じりの田西さんの言葉に、居合わせた常連は大喜びだった。
同店は、昭和8年に田西さんの父親が東京・大田区で創業。その父の跡を継いだ長男が亡くなったことで、3男の淳三さんが3代目を引き受けたという。
「うちはずっと最初から家族みんなでやってきた店でしてね。今は、長女の優子が手伝ってくれているというか、どちらかといえば中心ですね」(淳三さん)
その優子さんは、明るくてしっかり者の料理研究家。「親孝行を兼ねて、手伝いに来ています。立ち呑みを昔からやっている店なのですが、当時はつまみが乾きものだけしか扱っていなかったんですよね。これじゃだめ、お客さんのためにも美味しいもの作って食べてもらいたい。そう思いまして、正式な許可を取って始めました」(優子さん)