外交的にも厳しい立場に立たされる。これまで日本は、南シナ海で中国と紛争を抱えるフィリピンやベトナムをはじめとするASEAN諸国と連携して中国に対峙する方針をとってきた。だが、そのASEANがAIIBに取り込まれたことで、逆に「日本包囲網」が敷かれることになる。
ODAを通じたインフラ整備により、日本はアジア諸国で親日感情を築いてきたが、その苦労も水泡に帰しかねない。
それだけではない。米紙ウォールストリート・ジャーナルは3月22日、AIIBを巡り、オバマ政権が中国側に対して、アメリカ主導の世界銀行との共同出資事業を提案していると報じた。アメリカ財務省のシーツ次官は同紙のインタビューに「アメリカは国際金融の枠組みを強化する新しい多国籍の金融機関を歓迎する」と語った。
イギリスやドイツなどが参加表明した今、アメリカだけがAIIBと距離を取り続けるのは得策ではないとの判断があったようだ。このままではアメリカさえも“忠犬”の日本を切り捨てて世界の潮流が決することになりかねない。そうなればまさに「21世紀版ニクソン・ショック(※注)」だ。
【※注/1972年2月、ニクソン米大統領が中国を電撃的に訪問し、毛沢東・主席や周恩来・首相と会談した。当時、イギリス、フランス、カナダなどは中国を国として承認していたが、日本はアメリカの意向のもと未承認だった。日本にはニクソン訪中は事前に知らされず、一気に米中が緊密になり日本は孤立した。なお、同年8月に突然アメリカが発表した金とドルの兌換停止もニクソン・ショックと呼ばれる】
※週刊ポスト2015年4月10日号