国際情報

李克強に健康不安説 後任候補は習近平と同じ布団で寝た間柄

 北京では昨年来、李克強首相の健康不安説が囁かれていたが、先月の全国人民代表大会(全人代)を機に「ポスト李克強問題」が急浮上してきた。ジャーナリストの相馬勝氏が解説する。

 * * *
 中国では最近、習近平の個人崇拝熱が高まる一方で、軍内での反腐敗運動の急拡大などで習近平の権力掌握が急速に進んでいる。このためか、党中央財政経済指導小組や中央全面深化改革指導小組などの経済関連の党中央機関の責任者は、これまでは首相が兼務してきたが、習近平指導部体制では習近平自らがこれらの役職を兼務し、習近平への権力の一極集中が際立っている。

 逆に言えば、李克強に重要な仕事を与えないことで、任期半ばでの突然の交代劇を視野に入れた習近平の深謀遠慮とも受け取れる。

 仮に交代するとすれば、有力候補は習近平が最も信頼する王岐山・党中央規律検査委員会書記(常務委員)だろう。なにしろ、習近平と王岐山は10代のころ陝西省の農村地帯にともに下放して農作業に汗を流し、同じ布団で寝て暖をとって将来を語りあったといわれるほど、関係が深い。

 習近平は福建省幹部時代の1998年、文革時代の下放青年の同窓会を開くということで、陝西省政府から招待され、ほぼ20年ぶりに王岐山と再会。王岐山は当時の下放青年出身者のなかでは習近平と同じく出世頭で、広東省の副省長だった。このとき、2人は酒を汲み交わして、昔話を懐かしむとともに、将来に向けて、党中央入りし、ともに新しい中国建設のために汗を流そうと誓い合ったという。

 王岐山はもともと優れた金融マンでも、行政官僚でもあり、中央銀行の中国人民銀行副総裁や広東省副省長、海南省党委書記、北京市長、さらには副首相として金融や商務、市場管理などを担当し金融・経済問題で辣腕を振るった。広東省副省長時代のアジア金融危機や北京市長時代の新型肺炎(SARS)などの対応が優れ、いずれも危機を脱したことから、「消防隊長」との異名を持ち、頼りになる男の代名詞のようにもてはやされた時期もある。

 習近平体制発足後は規律検査委のトップとして、習近平が最も力を入れている腐敗対策を担当し、これまでアンタッチャブルだった党政治局常務委員経験者の周永康・元政法委員会書記や、軍の制服組トップだった徐才厚・元中央軍事委副主席(今年3月死去)ら“大トラ退治”を成し遂げるなどの辣腕を振るう一方で、“汚れ役”を一手に引き受けている。習近平にとっては、まさに頼りになる「消防隊長」ともいえる人物だろう。

※SAPIO2015年5月号

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト