たとえば18~69歳の男性で軽い運動を日常的に行なう人であれば、1日の摂取カロリーは2600プラスマイナス200キロカロリーで、主食は1日7~8SVが推奨される。ご飯(中盛り)なら4、5杯程度だ。
東海大学名誉教授の大櫛陽一・大櫛医学情報研究所所長が指摘する。
「このガイドラインに従えばカロリーの半分以上を炭水化物から摂らなければならないことになる。世界の常識からはかけ離れています。たとえば米科学アカデミーの推奨する1日の炭水化物の摂取量は130グラムです」
炭水化物は1グラムあたり4キロカロリーなので、130グラムなら520キロカロリーとなる。2600キロカロリーが総摂取エネルギーなら、たった20%だ。「カロリーの過半を炭水化物で摂る」という厚労省と農水省のバランスガイドとは大きな差がある。
他にも厚労省の「日本人の食事摂取基準」ではカロリーの50~65%を炭水化物から摂取することを目標に掲げ、それが生活習慣病予防につながるとしてきた。
「平成24年国民栄養調査によれば日本人は1日260グラムの炭水化物を摂取しています。アメリカの推奨量の倍です」(同前)
そうした啓蒙の下で状況は悪化している。日本人の糖尿病患者数は2012年に約950万人となり、予備群を含めると約2000万人超といわれている。
糖尿病が深刻なのは、高血糖の状態が続くことで様々な合併症が起こるからだ。筋肉の萎縮する神経障害、失明の恐れがある網膜症、週に数回の人工透析が必要になる腎症の3大合併症に加え、脳卒中や心筋梗塞のリスクも高まる。
学会や国のガイドラインという“権威”の指示を鵜呑みにしていては、自らの命を危険に晒すことになりかねない。
※週刊ポスト2015年4月24日号