それでもテキサス刑事は人気を博し、番組はそれまでで最高の視聴率を記録する。そして一年のはずの出演期間は延びることになった。

「父親から『やり始めたことは最後までやれ』と教育を受けていたので、辞めることだけは絶対にできませんでした。とにかく、一年だけ我慢しよう、と。ですから、一年経って『これで終わりだ』と思ったのに『もう一年』と言われた時はガクっときましたね。『え、またやるの?』って。

 でも、二年目は自分にも余裕が出てきましたし、新たに新人役で宮内淳も入ってきましたから、スタンスも変わりました。セリフもちゃんと言えるようになって、少し面白くなった。露口茂さんや下川辰平さんといった先輩たちの芝居も落ち着いて見られるようになりました。それまでは、そんな余裕は全くなかったですから。

 露口さんの間の使い方はマネました。上手いんですよ。すぐにセリフを言わないで、ちょっと間を置いて、何か思わせる。普段の役の時は走り回って動き回ってばかりなのですが、『テキサス編』というのもたまにあって、そこでは若者の悩みとかを描いていただける。そういう時に、露口さんの間を使ったりしていました。

 もう毎日がハードでしたから、現場での皆さんの芝居が僕にとってのアドバイスでした。飲んで演技論をうかがう、とかはなかったです。もうその日の撮影が終わったら、すぐにバタンでした」

■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋社館)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

※週刊ポスト2015年4月24日号

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