国内

本気で当選目指した羽柴秀吉氏 家では別の顔を持つ父だった

 日本一有名な「泡沫候補」が死去した。自分を生まれ変わりと信じていた「羽柴秀吉」の名で東京都知事選など多くの選挙に出馬した三上誠三氏が4月11日、肝硬変のため65歳で亡くなった。
 
 甲冑姿のド派手な選挙ポスターや大阪城を模した自宅などが話題となり、「泡沫候補」の中でも名の知れた存在となった。選挙にのめり込むようになったきっかけを次男の大和氏が話す。
 
「父は20代の頃、青函トンネルの土砂運搬工事の仕事を、談合破りをして取ってきたことがあったそうです。そのせいで青森の業者からは締め出しをくらい、隣の秋田県まで資材を取りに行かなければならなかった。そんな経験をしたことで、政治の力で公共事業をめぐる悪しき風習を何とかしたいと思ったようです」
 
 1976年に地元・青森県金木町(現・五所川原市)での立候補を皮切りに、2011年の夕張市長選まで「計17回立候補してすべて落選」(大和氏)。2005年、五所川原市長選に立候補した際に支援した民主党青森県連副代表の今博氏が振り返る。
 
「どうやったら有権者に思いが伝わるかという情熱を持っていて、金色の名刺を配るなどして印象に残るアピールをしていました。長靴に会社の作業着姿で演説するなど庶民的な面もあって、人なつっこい笑顔が印象に残っています」
 
 ところが、意外にも家庭では全く別の顔を持った父親だったと大和氏はいう。
 
「家族の前では口答え無用の『鬼』でした。怒鳴るわ手が出るわで誰も逆らえません。子供の頃は私の友達ですら『お前の親父がいるなら家に遊びに行かない』というぐらい恐れられていた。晩年、病気で立っているのがやっとの状態でも、柱にしがみつきながら怒鳴り散らしていたくらいです。
 
 仕事人間で朝は早く夜は遅いため、食卓を共にした記憶もありません。しかし選挙は遊び半分でやっていたわけではなく、本気で当選しようと情熱を注いでいました。病気が発覚した後も『もう一度選挙に出たい』と漏らしていたほどです。タバコや酒、ギャンブルはやらなかったので、選挙が生きがいだったのではないでしょうか」
 
 2007年の夕張市長選では当選者と342票差まで詰め寄った三上氏だったが、それでも当選は叶わなかった。有権者からの支持は集まらなかったが、国民的関心を集めたことは間違いない。

※週刊ポスト2015年5月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
松田烈被告
「テレビ通話をつなげて…」性的暴行を“実行役”に指示した松田烈被告(27)、元交際相手への卑劣すぎる一連の犯行内容「下水の点検を装って侵入」【初公判】
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
会談に臨む自民党の高市早苗総裁(時事通信フォト)
《高市早苗総裁と参政党の接近》自民党が重視すべきは本当に「岩盤保守層」か? 亡くなった“神奈川のドン”の憂い
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン