スポーツ

通算得点でイチローに抜かれた王さんのコメントは出色だった

 イチローがまた通算得点記録の大記録を打ち立てた。記録に並ばれた王貞治氏の大人コメントが光る。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が解説する。

 * * *
 バリバリの現役選手にして、すでに「伝説」の存在になっているマーリンズのイチロー外野手。日米通算4000本安打やMLB10年連続200本安打など、これまでに打ち立てた記録を数え始めたら1日や2日では足りません。そんな歩く、いや走る記録男が、また新たな大記録を打ち立てました。

 今度は通算得点記録です。4月24日(日本時間25日)のナショナルズ戦の5回、同僚のタイムリーで生還したイチローは、日米通算で1967得点に到達。ソフトバンクの王貞治会長が持つ日本記録に並びました。この記事が出るころには、王さんの記録を追い抜く新記録を達成し、さらに数字を重ねていることでしょう。

 スポーツで大記録が達成されたとき付きものなのが、破られた側のコメント。今回も王さんは球団を通じて、こう祝福しました。

「どんな記録も破られ、更新されるべきもの。この記録も、いずれ、彼に更新してもらえると思っていました。(MLBには)まだ上の記録があるんだから、これからも積み上げていってほしいね」

 さすが、数々の記録を破られてきた王さんだけに、味わい深いコメントです。とくに「彼に更新してもらえると思っていました」という表現には、イチローに対するリスペクトや野球界全体の発展を常に考えている様子が漂っていて、王さんの懐の深さや大人の貫録を感じずにはいられません。

 王さんは、2013年のシーズンでヤクルトのバレンティン外野手が、自らが持っていた本塁打のシーズン日本記録を49年ぶりに塗り替えたときにも、「ほとんど2試合に1本の驚異的なペース。どこまでいくかファンといっしょに楽しみたい」と祝福。それまでこの記録が破られそうになるたびに、王さんは意地悪な雑音を浴びてきました。「ファンといっしょに」というあたりから、「俺はもうこだわってないんだ。勝手にややこしいドラマを仕立てあげないでくれ」という心の叫びが聞こえてくるのは気のせいでしょうか。

 イチローが2013年に日米通算4000本安打を達成したときには、3085安打のプロ野球記録保持者の張本勲さんはこう言って祝福しました。

「大あっぱれだ。4000本はとてつもない数字。精神力、技術、自己管理の3つが一致しないと、異国でヒットを重ねることはできない。ヒットを打つことに関しては群を抜いている。(中略)あれだけの選手は、今世紀は出てこないな」

 張本さんはイチローが日米通算3000本安打を達成したときには、祝福しつつも「あくまで参考記録だが」というお約束の強がりも盛り込んでいましたが、もはや遠くに行ってしまった4000本のときは手放しで絶賛しています。それはそれで潔い態度と言えるでしょう。

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン