――各エピソードが時系列順ではなくバラバラに述べられていることもあり『ニルヤの島』は難しいという感想をよく目にします。難しいと言われることは予想通りですか?
柴田:難しいものを書こうと思っていた時期に書いたので、予想はしていました。
大学の文芸部に入っていますが、そこでは学年が上がるにつれ人にわかりやすいものを書こうと気を配る傾向があります。新入生は自分の世界を出すだけで精一杯で、二年生以降は読み手を意識してだんだん進化していくからです。『ニルヤの島』は三年生の時に書いた作品ですが、そのころ「分かりやすいだけではダメかもしれない」と考えていました。物語化できない物語を意識したゆえの挑戦だったのですが、簡単には書けなくて困りました。
――より理解しやすい読み方は?
柴田:一本線の物語を複雑に絡ませた状態なので、まとめなおすと読みやすいですね。わざと時系列をバラバラにしていますが、少しずつ年代を記してあるところがヒントになります。パズルのようにその部分を拾ってもらえたら、一本につなげやすいと思います。謎解きをするような気持ちで読んでもらうと、わかりやすくなるかと。
――書くときも時系列はバラバラなのでしょうか?
柴田:今回はまず、大まかに4種類ある物語を考えて表にし、それぞれの物語の転換点を考えたときに転換点どうしのつながりをひとつずつ考えて組み合わせていきました。4つ考えていた物語を組み合わせています。
――同じような書き方を、これまでにもされてきたのですか?
柴田:ワシ自身はしたことがないですね。書き始めたときにイメージしていたのは京極夏彦さんの『絡新婦の理』というワシが好きな作品です。名前の通り、クモの巣のように複雑に物語が絡まり合い一つの事件が次の事件を呼ぶという構造をしています。書き終わったら全然、違うものになりましたが、次々と事件が連鎖して、誰かの行動が他の誰かの行動に影響を及ぼす形で書けたらなあと思っていました。