「とにかくメチャメチャ嬉しかったですね。“コレを求めてやっているんだよな”と改めて感じましたし、“また勝ちたい”という気持ちになった。今も苦しい時にリングを見ると“あの時は頑張ったな”と救われます」

 2008年にはフィラデルフィア・フィリーズでもワールドシリーズを制覇した。世界の頂点を2度制した職人は先駆者に敬意を表する。

「野茂さんが道を切り開いてくれたから、僕らが続くことができた。マウンドの傾斜やボールの質など日米の違いをモノともしない精神面の強さは本当にすごい。あの人でないと先陣は切れなかったでしょう。

 一度だけ日本で対戦したけど、ど真ん中に直球がきたイメージでバットを振り始めたら突然、球が消えた。アメリカ人のスプリットは速いけど落ちが小さい。野茂さんの“消える魔球”に遭遇したメジャーのバッターは驚愕したでしょうね」

 偉大なる先人に続き、「脇役道」を究めてメジャーに爪痕を残した田口氏はさらに続く選手に期待する。

「チームプレーに徹する日本の“細かい野球”はメジャーでも通用するはずです。日本人選手はもっともっとメジャーに挑戦してほしい。

 日ハムの中田翔選手は右の長距離砲として、広島の菊池涼介選手は内野手として大いに期待できます。日ハムの大谷翔平選手はぜひ二刀流のまま挑んでほしい。投手だけで成功するより夢がある。きっと野茂さんのように日本のファンに勇気を与えられるはずです」

■たぐち・そう/兵庫県出身・45歳。西宮北高、関西学院大からオリックスに入団。2006年にカージナルス、2008年にフィリーズでワールドシリーズ優勝。現在は野球解説者。

※週刊ポスト2015年5月29日号

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