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イラン核保有なら周辺国が続々核を買いエジプトは自力開発か

 イスラム世界を巡り、社会学者・橋爪大三郎氏と元外務省分析官・佐藤優氏がアラブの春に揺れた中東諸国の「舞台裏」を語り尽くす。もし「イスラム国」が核兵器を手に入れたら──欧米各国のインテリジェンス機関は、そんな最悪のケースを念頭に入れながら、活動を行っているという。

佐藤:「イスラム国」を巡る紛争はこれからも続きます。今後は「イスラム国」が大量破壊兵器を手に入れて使うかどうかが重要なポイントになってきます。

橋爪:確かに核の拡散は憂慮すべき事態ですね。前回佐藤先生が指摘されていたようにイランが核を持つリスクがあるにもかかわらず、アメリカが融和的な態度に出ているとすればなおさらです。

佐藤:最近の世界情勢を見ていると、各国は「イスラム国」を掃討するというよりも、どのように核を封じ込めるか、というところにまで戦線を後退させているように感じます。

 アメリカがイランの核兵器を止めなければ、イランと関係が悪いサウジアラビアに核が渡る危険性があります。というのは、イランが核を持った場合、パキスタン領内の核弾頭をサウジアラビアに移動するという秘密協定を両国が結んでいるからです。

 パキスタンは核開発のスポンサーであるサウジアラビアに「よこせ」と言われたら断れない。またイランが核を持てば、核の恐怖で均衡を保つためにアラブ首長国連邦もカタールもオマーンも核を買うでしょう。エジプトは自力で核開発をします。

 インテリジェンスや軍事の専門家は、そうした秘密協定があるという前提で国際情勢を見ています。

橋爪:通常の主権国家同士であれば互いに核を持っているのなら使うことはできませんが、「イスラム国」はもちろん、それ以外のイスラム諸国にも、およそ現代社会と適応しない要素がたくさんあります。

佐藤:イランではシーア派のなかでも12イマーム派というグループが実権を握っています。イマームとはシーア派の最高指導者。9世紀末、11代目のイマームが亡くなり、新たなイマームが登場しました。しかしすぐにお隠れになってしまった。この隠れイマーム(12代目のイマーム)が救世主として現れて、この世を救うという教義を持つのが、12イマーム派です。

 現在もイランの一部の人々は敵対するイスラエルが核攻撃を行ったら、隠れイマームが現れて守ってくれると本気で信じている。(敵対国が核を持っても、“抑止力”とはならないため)核を持つことでイランが暴走してもおかしくない。

※SAPIO2015年6月号

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