ベネチア、ベルリンに並ぶ世界三大映画祭のひとつである『カンヌ国際映画祭』。1946年に始まって以来、毎年5月、南フランスのリゾート地であるカンヌには世界中から一流の映画人が集う。そのレッドカーペットは、そんな映画人と新たな才能を丁重に歓迎する場所。来場セレブたちは伝統と格式を重んじ、ドレスアップしてその真紅の絨毯を歩くのだ…。
「私の知人が素敵なフラットシューズを履いていました。ビーチで履くような靴ではまったくありません。でも、追い返されてしまいました。彼女たちは50代でした。ふさわしい靴を履いて戻ってくるように言われました」
今、世界中で大論争となっている「女性は正装でハイヒールを履かなければならないのか?」問題。発端は、5月19日、イギリスの映画情報サイトが掲載したそんな証言だった。
これは『第68回カンヌ国際映画祭』開催中の5月17日に行われた女性同士の愛をテーマにした『キャロル』上映で起きた“事件”だった。前出の証言者を含む50代の女性数人が、かかと部分が低い靴であったことを理由に会場への入場を拒否されたというのだ。
報道を受け、2011年に急死した英歌手、エイミー・ワインハウス(享年27)のドキュメンタリー映画『エイミー』でカンヌに参加していたアシフ・カパディア監督が《妻にも同じことが起きた(でも最後には参加できた)》とツイートしたことで騒動が拡大。名だたる女優がこれに続いた。
「私はコンバースのスニーカーのほうが好きね」(エミリー・ブラント)
「似合うほうを履いたらいいんじゃない?」(ナタリー・ポートマン)
ある仏在住映画関係者がこう話す。
「当初カンヌ関係者らは、“レッドカーペットでは女性はドレスにハイヒール、男性はタキシード正装を義務づけている”とドレスコードの存在を認めていたんですが、映画祭に参加していた女優らの多くが“ハイヒールの強要は女性の自由を束縛する”と大激怒。
“ハイヒールを脱ごう”と呼びかけたり、平らな靴を履いてレッドカーペットを歩くなど、今回の時代錯誤な対応に抗議する事態となりました。またインターネット上での批判も噴出したんですが、さすがに映画祭責任者はあわてて“ハイヒールを義務づけているというのは根拠のない噂”とツイートするなどして火消しに回ったんですよ」
※女性セブン2015年6月11日号