芸能

左とん平 謹慎中に小林桂樹からキツいひと言を受けた思い出

 半世紀を超える芸能生活は波瀾万丈を地で行く七転八倒ぶり。ポーカー賭博による3度の逮捕では世間からの批判も浴びた。しかし周囲には変わらず、厳しくもあたたかく彼を見守るたくさんの仲間たちがいた。このたび、めでたく喜寿を迎えた名優・左とん平(78才)が、今は亡き小林桂樹さん(享年86)との交遊録を初めて明かした。

 * * *
 4月16日、都内のホテルで行われた「左とん平喜寿お祝いパーティー」には、200人あまりの著名人が集まり盛大に開かれた。

 この日の会場には、常にあたたかい空気が流れていた。長年共に苦楽を歩んできた仲間たちが発起人となり、時にきつい冗談も挟みながら思い出話に花を咲かせる。思いはひとつ、「名優・左とん平を祝福したい」からだ。半世紀を超える芸能生活において数々の大物芸能人と交流してきた。不祥事による謹慎中には、さまざまな先輩たちが力になってくれた。

「忘れられないのは小林桂樹さん。ポーカー賭博の問題で謹慎しているときのことだよ。時間を持て余して退屈していたら、小林さんが菓子折りを持って自宅まで来てくれたんだけど、いつまでたっても、家の中をキョロキョロ見回している。で、何て言ったと思う? “これが犯罪者の家なんだ。珍しいモノを見せてもらったよ”だって。これには、さすがに参っちゃったよ(笑い)」

 他の人が言えば角が立つことでも小林が言えば嫌みに聞こえない。そこには他の役者にはない風格と存在感、そして優しさがあった。

「ある歌手が売れ始めた頃、映画で共演したんだ。ところが、その彼が忙しすぎて現場に遅刻した。現場に着いてすぐに、彼が小林さんに謝りに行くと、“別に気にしなくていいよ”と平然と言った後に、“でも大丈夫だよ。来年になれば仕事が減るから”だって(笑い)。タイミング、言い回し、小林さんは本当に絶妙なひと言を口にしていたな」

 小林は大先輩である森繁久彌のことを「シゲさん」と呼んでいたという。「森繁さん」なら理解できる。けれども、「シゲさん」とは少しなれなれしすぎるのではないか? 実際に年齢は森繁の方が10才も上だった。不思議に思ったとん平が尋ねる。

「森繁さんの方が年上ですよね?」

 これを受けて小林は言う。

「年齢はぼくの方が年下だけど、映画ではぼくの方が先輩だから」

 大御所2人のプライドの激突を見たようで、とん平にとって、この言葉はとても印象に残った。

取材・文■ノンフィクションライター・長谷川晶一

※女性セブン2015年6月11日

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン