これも類まれな経済成長あってのエピソード、なのかもしれない。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が指摘する。
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まるまると太り体格の良い坊主頭の若者が上半身裸という姿で、体に「私を買ってください」と書いた紙を貼って街頭で訴えかけるという騒動が起きたのは5月17日のことであった。
場所は重慶市九龍坡区の繁華街。男はたちまち百人を超える野次馬に囲まれ、なかには若い女性が連絡先を交換していくという光景も見られたという。『四川在線』が翌18日付で伝えたニュースだ。
だが男が呼びかけた相手は若い女性ではない。中国で「富婆」(セレブなマダム)と呼ばれる人々である。
実はこの男、清華大学で博士号を取得した研究者であると自称していて、今回、街頭でこんなことをした理由は、海外に勉強に行く資金がないからだという。要するに留学資金を出してくれる金持ち夫人を求めているというわけだ。
だが、留学が理由といいながら男が要求する資金はなんと500万元(9500万円)だという。途方もない金額だが、その点について記者に訊かれた男は、「一元でも足りなければ自分は売らない。なぜなら私は500万元の価値のある男だから」とのたまったという。
では、お金を出す富裕層夫人にはどんなメリットがあるのか。男が答える。
「500万元を出しもらえば、私自分の夢を実現できる。そして数年後に帰国すれば必ず祖国に報いることができる」
これ、大丈夫?