スポーツ

世紀の誤審で敗れた篠原信一 「弱いから負けた」発言の真意

シドニー五輪での「誤審問題」を振り返る篠原信一

 シドニー五輪男子柔道の銀メダリスト・篠原信一(42)が、ここ最近バラエティ番組で引っ張りだこだ。篠原といえば、避けて通れないのが、いわゆる“世紀の誤審”だ。

 同五輪男子柔道100キロ超級決勝で、篠原の「内股すかし」が決まった瞬間、目の前の副審が右手を挙げて「一本」と判定したのを見て、思わずガッツポーズをし、ドゥイエ(フランス)は落胆の表情を浮かべた。ところが、主審ともう一人の副審はドゥイエの「有効」と判定。ポイントをリードされて焦った篠原は技をかけきれず、手中にしたはずの金メダルは、その手からこぼれ落ちていった──。

 日本柔道の威信をかけた男子柔道最重量級の決勝の舞台で起きたこの誤審事件。山下泰裕監督や斉藤仁コーチの猛抗議にもかかわらず判定は覆らない。表彰台で銀メダルをかけ、うなだれる篠原の姿を見て、日本中が言い知れぬ虚脱感に覆われた。あれから15年。男子柔道日本代表監督も経験した篠原は、あの時のことをどう語るのか。

──試合終了後、「弱いから負けた」といいました。

篠原「投げた瞬間、僕はガッツポーズして、『よし、一本や』って審判にいったと思うんです。でも、審判は有効のジェスチャーやった。その後、相手と組みながら思うんですよ。“なんで今のが一本やないんや”“あれ、なんで相手のポイントになってるんや”“いやいや、俺の一本でしょ”って。

 リードされて焦りました。でも、シドニーで金を取った野村(忠宏)や井上康生やったら、それでも気持ちの切り替えができて、絶対もう一回投げてるんですよ。でも自分はできなかった。そこに弱さがあったんじゃないかなって。

 オリンピックには魔物がいるっていいますけど、そんなものはいない。試合当日に強い奴が勝つようになっているんです。“負けた、終わった”という思いだけで、誤審や審判に対する怒りなんて、まったくなかった」

──当時、日本人の多くは判定に納得できなかった。

篠原「試合直後、山下先生が抗議してくれていたことすら、自分は知らなかったんです。翌々日かな、日本の新聞を見て、“あ、抗議してくれてたんだ”って。僕の目の前で抗議してたかもしれませんけど、その時はまったく目に入ってこなかった。“負けてしまった”──それだけでした、ほんまに」

撮影■村上庄吾

※週刊ポスト2015年6月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン