【4】これから・木村拓哉の不安と期待
果たして、これから木村拓哉はどこへ向かうのか? 個人的な希望としては、ヒーロー役にかじりつくことなく、普通の市民、あるいは不器用な職人とか、人生を失敗する汚れ役まで、幅を広げて自在に演じてほしい。
とにかく、「カッコつける」あのそぶりさえ封印してしまえば、木村さんは味わい深い役者として、持てる力を存分に発揮できるのではと期待します。
今回の父親役も、「その色がついてしまうことを事務所が避けている」(東スポ2015.5.23)という説あり。家庭食の定番・カレーのコマーシャルも別タレントに交替したとか。しかし、ドラマ界における人的資源・ヒューマンリソースという視点から見れば、ヒーローという色がこびりついて抜けなくなってしまう方が悲劇ではないでしょうか?
実は、ドラマが始まるやいなや、熱狂的なファンの叫び声が聞こえてきたのです。
「迷ったり悩んだりするキムタクなんて、絶対に見たくない」
「ヒーローでこそのキムタク。挫折したサラリーマン役は似合わない」
一般視聴者である私は驚かされたのですが、しかし実はこうした声、「少数派」ではなかったということ。だからこそ、最終回はヒーローもので、というわけなのでしょう。木村さん個人のせいというよりも、どこまで行っても追いかけてくる宿命であり、周囲からの期待や要望に応えなければならない、アイドルの悲劇かもしれない。
キムタクと、役者・木村拓哉のせめぎ合い。いずれにせよ、『アイムホーム』は彼の「分岐点」と「可能性」を強く印象付けたドラマに違いありません。