――二重に絶対的な人気があるのは、アイコンとなるような誰かの影響が大きいのでしょうか?
北条:1990年代後半からずっとカリスマでいつづけている浜崎あゆみさんが今の二重ブームをつくったと言えます。思春期に彼女をみて育った女性たちはいま20代後半です。あゆのようになりたい、という気持ちを抱いて実行する女性が一定層いるんです。気持ちはわかりますよ。あゆは本当にかわいいと私も思います。ブログもPVもいろんな顔のあゆが見られて、それがみんな可愛くて感動すら覚えます。
――浜崎あゆみ登場以前から二重は人気が高かったのでしょうか。
北条:さかのぼると1960年代に欧米のモデル、トゥイギーが世界中で女の子たちのスターになって、それがきっかけで日本でも「つけまつげ」が発売されました。それまで一般女性につけまつげは広まっていなかったんです。欧米人みたいな二重とまつ毛を自分もしてみたいという女の子が増えました。ただ、道具や技術にハードルがあってブームがすぎると、つけまつげをつけたデカ目メイクは、一般的ではなくなりました。
1990年代になるとギャル文化を中心にメイクが劇的に発達します。糊で二重まぶたをつくるアイプチの登場やカラーコンタクトレンズなど便利な用具が普及し、それらに寄り添うように技術が進歩して、最近ではメイクで別人のようになる整形メイクという言葉までできています。美容外科の技術も進化してプチ整形ブームが起き、いまに繋がっています。
――それでも化粧から整形へと踏み出すのには勇気がいりそうですが
北条:実際に整形をする人は何らかの「行動力」がある人ですね。そして美意識や女子力が高い人が多い。やりたくなる気持ちはわかりますよ。少し踏み出せば二重まぶたになり、ヒアルロン酸注射を0.8cc入れるだけでノーズシャドーを入れなくても高い鼻になる。メイクした顔を自分の普段の顔にしたい人にとって、ものすごく魅力的だと思います。
――美容外科の進化とともに整形の価格も庶民的になったのでしょうか?
北条:自由診療なので様々な価格がありますが、二重まぶたにするための施術だと最近は7000円程度でも可能です。もちろん、同じ内容でも技術が高いことを理由に高価格帯を設定しているクリニックもあります。払える金額を考えながら、どんな手術なのか口コミをすごく調べる。すでにプチ整形をした友人の体験もきいて、慎重にクリニックを選んで踏み切っています。理想の顔を定着できる技術がそこにあるとわかったら、止められないですよね。
■撮影:青山裕企
●北条かや(ほうじょう かや)1986年、石川県金沢市生まれ。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。みずからキャバクラで働き調査を行った経験をもとに『キャバ嬢の社会学』を上梓。最新刊は『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)。社会系・経済系の記事を寄稿・提供する傍ら、「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(NHK)、「モーニングCROSS」(TOKYO MX)などに出演。