国内

芥川賞作家・又吉直樹 自虐的な相方綾部と阿吽の呼吸は見事

 お笑い芸人の又吉直樹氏が芥川賞を受賞した。純文学の登竜門として権威ある芥川をお笑い芸人が獲るのは史上初の快挙だ。しかもそれだけでなく、受賞会見が大人力に溢れていたと、大人力コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 出版界にとって久しぶりの明るい話題と言っていいでしょう。人気お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹が書いた小説『火花』が、第153回芥川賞を獲得。羽田圭介の『スクラップ・アンド・ビルド』との同時受賞で、直木賞は東山彰良の『流』が受賞しました。

 もちろん受賞自体もたいへんな快挙ですが、感動させられたのは受賞会見やその後の取材での又吉の発言。巧みに笑わせつつ、随所に並々ならぬ大人力があふれていました。

 とくに着目したいのが、相方の綾部佑二に対する深い気づかい。「今後、師匠や兄さんから『先生』と呼ばれるのでは?」という質問に対して、こう答えています。

「僕のことをふざけて先生と呼ぶことはあると思うんですけど、本気で呼ぼうとしているのは相方の綾部だけだと思う(笑)」

 このところコンビ格差をネタにしている綾部にとっては、そうやっていじられることが何よりありがたい対応。実際、綾部は受賞を知って「大先生、芥川賞おめでとうございます。これで本格的にアシスタントになる覚悟ができました。これからも宜しくお願い致します」という自虐的なメッセージを発表しています。

 又吉は会見後の取材でも、綾部から「(借りてた)2万円、返さんでいいよな!?」というメールが届いたことを暴露しつつ、「ちゃんと返してもらおうと思います」と断言したり、ふたりっきりのときに「(受賞したら)時計買ってくれ」と言われたことを漏らしたりなど、綾部の自虐キャラ作りを見事にアシストしました。まさに大人力に満ちた阿吽の呼吸であり、深いコンビ愛のなせる業と言えるでしょう。

 もし仮に、又吉が綾部に対して申し訳なさそうな素振りを見せたり、綾部が又吉に型通りの強がった祝福を送ったりしていたら、どうだったか。当人同士もモヤモヤするだろうし、そんな様子を見たり読んだりしている私たちも、微妙なわだかまりの存在を邪推して、ふたりを見ても素直に笑えなくなりそうです。しかし、綾部が自虐のポーズに徹し、又吉がそれを軽くあしらうことで、コンビにとってのピンチを見事に乗り切りました。

 賞金の100万円の使いみちを聞かれたときも、「食べたことのないご飯を食べましょうかね。たとえば、行ったことのない国の料理を食べましょう。(同居している)パンサー向井とジューシーズ児玉になるんでしょうかね」というプランを発表。相方の綾部については「好き嫌いが激しいので、食うたことがないものは食わないと思うので後輩ふたりで行きます」と言い切りました。

 綾部としては、そういう席に行ったとしても、どう振る舞っていいか困ってしまうでしょう。誘われて断わるのも、やっかんでいるみたいで嫌な感じです。あらかじめ「呼ばない理由」をはっきりさせたのは、大人の思いやりに基づいてのことに違いありません。

関連記事

トピックス

山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン