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ひめゆりの塔事件直後に明仁皇太子が詠まれた平和の「琉歌」

 世の中のさまざまな問題について国民とは違ったお立場で考えてこられたであろう天皇陛下。戦後70年の節目となる今年4月には、天皇皇后両陛下の強い希望により、パラオ共和国への慰霊の旅を終えられた。また、6月には私的旅行中に宮城県蔵王町を訪問され、パラオ共和国から戦後に引き揚げた人々と懇談された。折に触れ、陛下が発せられる考え抜かれたお言葉の背景には、第二次世界大戦で命を失った人びとへの慰霊の思いと、そうした過ちを二度と繰り返してはならないという強い決意が常に存在する。

 なかでも「その原点となったのが“沖縄”だったのではないか」と語るのが、陛下のお言葉を綴った『戦争をしない国』(小学館刊)の著者である矢部宏治さんだ。

「昭和天皇は敗戦の翌年から、国家再建の先頭に立つべく、全国各地を訪問されました。しかし1か所だけ行けなかったところがあります。沖縄です。激しい地上戦が行われた沖縄には、昭和天皇に対する強い怒りがあったからです。

 その代わりに1975年7月17日、当時41才だった明仁皇太子が、沖縄海洋博の開会式出席のため、美智子妃とともに初めて沖縄を訪問されましたが、そこで、“ひめゆりの塔事件”という大事件が起こります。明仁皇太子も『石ぐらい投げられてもいい。そうしたことに恐れず、県民のなかに入っていきたい』と沖縄訪問前に語っておられ、不測の事態が起こることも覚悟されていたのでしょう。しかし、投げられたのは石どころか火炎ビン。数メートル前方の献花台の手前の柵に当たって炎上した炎は、明仁皇太子と美智子妃の足元まで流れ、現場は大混乱に陥りました」(矢部さん)

 命さえ危うい緊迫した状況のなか、予定を変えず訪れた次の慰霊の地である「魂魄の塔」へ向かわれた。そこで詠まれたのがこの歌だ。これは、「琉歌」という沖縄の伝統的な形式で詠まれたものだ。

「花よおしやげゆん(花を捧げます)
人 知らぬ魂(人知れず亡くなった多くの人の魂に)
戦ないらぬ世よ(戦争のない世を)
肝に願て(心から願って)」
(1975年/沖縄訪問から帰京されてすぐに詠まれたお歌)

「一種の極限状態の中で明仁天皇は、沖縄の人たちが、日本人、アメリカ人、軍人、一般人の一切の区別なく、身元不明の戦没者を弔った『魂魄の塔』の前に立たれた。これはそのときの厳粛な思いを詠まれた歌で、何度読んでも本当に素晴らしい。私がこの本を書こうと思うきっかけになった歌です。

 このなかで歌われた、二度と戦争という過ちを起こしてはならないという強い気持ち、平和国家建設への強い思いが、象徴天皇という新しい時代の“天皇のかたち”を探し求める明仁天皇の原点となっていったのではないかと、私は思っています」(矢部さん)

※女性セブン2015年7月30日・8月6日号

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