ライフ

長岡の戦没者慰霊花火「白菊」 終戦日には真珠湾で打ち上げ

毎年8月1日に打ち上げられる鎮魂の花火「白菊」

 毎年8月2~3日に開催される「新潟・長岡まつり大花火大会」だが、今年も開催日前日の8月1日に、白一色の尺玉花火「白菊」が打ちあげられる。美しくも哀しい逸話を持つこの花火と、今年の長岡大花火大会について、『白菊 -shiragiku- 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花』(小学館)の著者である山崎まゆみ氏が紹介する。

 * * *
「ドン、ヒューー、バーン」──白一色の尺玉の花火「白菊」は、毎年8月1日午後10時半に打ちあがる。「白菊」は長岡の夜空に楚々と咲き、寂しげに散る。訴えかけるように咲くこの花火は見る者の心にいつまでも残る。今から70年前、昭和20年8月1日の同時間の長岡大空襲による殉難者の鎮魂と慰霊を意味する花火である。
 
 この「白菊」は、伝説の花火師・嘉瀬誠次氏が生んだ傑作の一つである。シベリアに抑留された経験を持つ嘉瀬氏が、生きて帰って来られなかった戦友のために捧げる供花としてつくった。そして、1990年にハバロフスクでこの「白菊」をあげた。これらの詳しい逸話は、拙著をご覧頂きたい。
 
 そもそも長岡大花火大会は、戦前から行われていたが、戦争によって中断。昭和22年に長岡復興祭の一環として再開した。そして昭和26年、復興祭が「長岡まつり」と改称して、戦後初となる「正三尺玉(しょうさんじゃくだま)」が打ちあがる。復員してきた嘉瀬氏が正三尺玉を復活させたのだ。

 家や家族を失った長岡の人々は、見事にあがった三尺玉の圧倒的な大きさと、美しさに、「これで戦争が終わったんだ。これからは明るい未来がある」と鼓舞されという。

 今や長岡大花火大会と言えば、2万発もの花火が漆黒の天空を彩り、毎年、100万人もの人が訪れる。

 戦後70年である今年は特別なプログラムが組まれている。復興の象徴である正三尺玉の三連発。さらに大仕掛けのスターマインと競うように、三尺玉があげられる。

 また、今年は8月15日にハワイの真珠湾でも「白菊」が打ちあがる。2012年に長岡市とホノルル市が姉妹都市になって以降、ワイキキ沖では追悼と平和への願いを込めた長岡花火を4回打ち上げてきたが、真珠湾では初となる。

 米国の犠牲者慰霊に1発、日本の犠牲者慰霊として1発、恒久平和を願ってもう1発があがる。16日には、慰霊の花火「白菊」に加え、未来に向けた花火として「フェニックス」「天地人」と長岡花火には欠かせない大花火が打ちあがる。

 嘉瀬氏が礎を築いた長岡の花火は「平和を願い、未来を想う花火」として、これからも歩み続けてゆく。

撮影■飯田裕子

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン