芸能

西郷輝彦 テーマが自分の中に入ればセリフは自然と出てくる

 17歳で歌手デビュー、立て続けにヒット曲にめぐまれ第6回日本レコード大賞新人賞を獲得した西郷輝彦は、歌手として絶大な人気をもちながら俳優になることを望んでいた。劇作家の花登筺(はなとこばこ)との出会いにより知った演技とセリフについて西郷が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 西郷輝彦は1964年に歌手としてデビュー、橋幸夫・舟木一夫と共に「御三家」としてアイドル的な人気を博す。その流れで映画にも進出、1964年の東映『十七才のこの胸に』を皮切りに、自らの歌を題名に冠した歌謡映画に主演していく。

「鹿児島から出てくるのに際して、第一の目的は俳優になりたいということでした。各映画会社がニューフェイスを採用していたので学生服に坊主頭で写真を送ったのですが返信はなくて。それで、『歌をやれば、いつか芝居もできるだろう』と思って歌の世界に入りました。

 ですから、初めて映画に出るとなった時は有頂天でした。ただ、歌がとにかく忙しかったので、『二時間空いたから、その間にロケに行きましょう』と2カットだけ撮ったりという状況でして。セリフを覚える時間もないので、監督が『どうせアフレコするんだから、俺の言うとおりに言いなさい』って現場でプロンプしてもらっていました。

 当時は俳優というより、歌手という感覚でした。それでも、何が何でも、そっちの世界に行きたいと思っていましたから、歌をやっている時よりも映画の時の方が嬉しかったですね」

 西郷が本格的に役者としての意識を抱くようになるのは、1973年から三年にわたって続いた花登筐の脚本によるテレビドラマ『どてらい男』(関西テレビ)に主演した時だったという。

「花登先生から『君を主役で考えている』と本をいただき、読んでみてあまりに面白いので『ぜひやらせてください』と次の日に返事しました。この役は誰にもあげたくなかったんです。鹿児島から家出してきた自分自身と、福井の田舎から出てきて偉くなっていく主人公とが重なるところがあって、心意気が分かるような気がしました。

 もう後へは戻れない。大変な決意で臨みました。中途半端は絶対に許されない。この番組を成功させるまでは、もう絶対に歌は歌わない覚悟でした。日本中の名優がゲストで出てくださったので、毎週が演技の勉強であり人生勉強でした。

関連キーワード

トピックス

ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
「鳥型サブレー大図鑑」というWebサイトで発信を続ける高橋和也さん
【集めた数は3468種類】全国から「鳥型のサブレー」だけを集める男性が明かした収集のきっかけとなった“一枚”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン