ライフ

鎌田實氏「生まれるのは偶然、死はすべての人にとって必然」

 自由に生きるのは難しい、と長野県の諏訪中央病院名誉院長でベストセラー『がんばらない』で知られる鎌田實医師は言う。幼少期からのみずからの生い立ちを振り返りながら、本当の自由を得ることについて鎌田氏が語る。

 * * *
 これまで幾度も話しているが、生みの親に棄てられ、育ての親に引き取られたが、そのときのことは記憶にない。その時、僕は1歳10か月。記憶がないだけで、いろんなことを感じる力はあったはず。

 ある日、住む家が変わり、見たこともない人を「お父さん、お母さん」と呼ばなければいけなくなって、悲しかったに違いない。本当の父母が恋しかっただろう。

 けれども、ここで失敗したらまた違う家に行かされて、これ以上悲しい思いをすることになる。そうならないように、いい子を演じ始めたのだと思う。

 育ての母は心臓病を患い、入院していることが多かった。父は夜中まで仕事があったから家にはいない。自分一人で生き延びなければいけないので、よその家でご飯をごちそうになる。どこでも生きるのが上手になった。1歳10か月からずっと僕は、無意識にいい子を演じ続けてきたのだ。

 大学を卒業し赴任した病院でも、地域医療を成功させるために地域にとってのいい子を演じてきた。仕事をするだけでなく、地域の人と一緒にご飯を食べ、酒を酌み交わし、健康づくり運動にエネルギーを注いだ。

 町の人からもよくしてもらい、諏訪大社の御柱祭の御柱にも乗せてもらった。地域にとってのいい子を演じていたからである。やがて、マスコミにも取り上げられることが多くなった。そのときも、期待に応えるようなスタンスでしゃべっている自分がいた。

 家族の中でも、いい夫やいい父を演じてきたように思う。誰にも無理やりコントロールされていないのに、無意識に自分自身で自分を枠にはめていたようだ。

 東日本大震災後、毎年、被災地である東北の中学校や高校で「命の授業」をしている。先日も福島と宮城の高校で講演を行なった。

 これまで自由の大切さを語ってきたのだが、今年はちょっと自分の中に迷いが生じている。自分は自由に生きてきたつもりだったが、果たして本当にそうだったのだろうか。いや、むしろ、逆だったのかもしれない──と。だから今年の講演会で正直に話した。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン