ライフ

【筒井康隆特別寄稿 1/2】不健康・不健全こそ老人の特権

 世の中、「下流老人」「老後破産」流行りのようだ。テレビ、書籍、雑誌の特集が、「下流老人は死亡率3倍、うつ5倍」などと定年前後の世代の不安を煽り立てる。しかし、である。ようやく定年世代は誰はばかることなく欲するところを実行する時間と権利を得たのである。

 むしろ老人になったいまこそ、不健康で不健全な生活を謳歌するがよかろう。シニア世代よ、これまで仕事や家族のためにできなかった「不良」な生き方を、してみようではないか。作家・筒井康隆氏が特別寄稿した。

 * * *
 この特集「不良老人のススメ」の巻頭言を不良老人代表として書かせていただくのはたいへん名誉なことである。その一方、八十歳になってもまだこのように著述業で収入を得ている自分が、若くして定年退職した人たちに対して申し訳ないという気持もある。しかしこれは昔から「小説書きなどは不良のすること」と言われてきたように、この歳になるまで不良であり続けてきたことが大いに幸いしている。

 語義通りの意味とは少し違うが「ならず者の傑物」と言われてきた自分がいささか誇らしくもあるのだ。実際にも作家の中で特に真面目だった人はずいぶん早死にしているかに見えるのであり、自分より年上の作家の名を列記し、亡くなった人の名の上に赤線を引いてけけけけけなどと笑っている自分を悪いやつだとは思うが、このあたりが不良の真骨頂ではなかろうか。

 定年退職してまず一番に幸せを感じるのはストレスからの解放である筈だ。ところが仕事人間であった人たちの多くが自覚するのは逆に仕事がないためのストレスなのである。なぜそれまで内在していた筈の不良性によってストレスから脱することができないのだろうか。

 通常は制度内で悪いこととされている飲酒や喫煙が自由にできるだけでもずいぶんストレス解消になる筈であり、それ以外にもちょっとした悪いことは数えきれないほど存在する。あなたのようにいつまでも若くいられるにはどうすればいいでしょうかと訊ねられた人が、あなたも若い頃ずいぶん馬鹿なことをした筈だ、それをもう一度やりなさいと答えたそうだが、これは正しい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

イベントの“ドタキャン”が続いている米倉涼子
「押収されたブツを指さして撮影に応じ…」「ゲッソリと痩せて取り調べに通う日々」米倉涼子に“マトリがガサ入れ”報道、ドタキャン連発「空白の2か月」の真相
NEWSポストセブン
元従業員が、ガールズバーの”独特ルール”を明かした(左・飲食店紹介サイトより)
《大きい瞳で上目遣い…ガルバ写真入手》「『ブスでなにもできないくせに』と…」“美人ガルバ店員”田野和彩容疑者(21)の“陰湿イジメ”と”オラオラ営業
NEWSポストセブン
「ガールズメッセ2025」の式典に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月19日、撮影/JMPA)
《“クッキリ”ドレスの次は…》佳子さま、ボディラインを強調しないワンピも切り替えでスタイルアップ&フェミニンな印象に
NEWSポストセブン
結婚へと大きく前進していることが明らかになった堂本光一
《堂本光一と結婚秒読み》女優・佐藤めぐみが芸能界「完全引退」は二宮和也のケースと酷似…ファンが察知していた“予兆”
NEWSポストセブン
売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕された池袋のガールズバーに勤める田野和彩容疑者(21)
《GPS持たせ3か月で400人と売春強要》「店ナンバーワンのモテ店員だった」美人マネージャー・田野和彩容疑者と鬼畜店長・鈴木麻央耶容疑者の正体
NEWSポストセブン
日本サッカー協会の影山雅永元技術委員長が飛行機でわいせつな画像を見ていたとして現地で拘束された(共同通信)
「脚を広げた女性の画像など1621枚」機内で児童ポルノ閲覧で有罪判決…日本サッカー協会・影山雅永元技術委員長に現地で「日本人はやっぱロリコンか」の声
NEWSポストセブン
三笠宮家を継ぐことが決まった彬子さま(写真/共同通信社)
三笠宮家の新当主、彬子さまがエッセイで匂わせた母・信子さまとの“距離感” 公の場では顔も合わさず、言葉を交わす場面も目撃されていない母娘関係
週刊ポスト
タンザニアで女子学生が誘拐され焼死体となって見つかった事件が発生した(時事通信フォト)
「身代金目的で女子大生の拷問動画を父親に送りつけて殺害…」タンザニアで“金銭目的”“女性を狙った暴力事件”が頻発《アフリカ諸国の社会問題とは》
NEWSポストセブン
鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン