この確執が下地にあることから、戦後70年の節目での親日発言の意図が姉への“口撃”だったのではと推測されているのだ。韓国政治に詳しい札幌学院大学の清水敏行教授が指摘する。
「父親の朴正熙・元大統領は親日家として知られていたため、朴槿恵氏は野党勢力などから親日のレッテルを張られることを恐れ、極端な反日路線を打ち出してきた。妹の槿令氏が親日をアピールすれば、父も妹も親日だから大統領も親日ではないのかと勘繰られることにもなりかねない」
一方で全く別の理由も指摘されている。在韓国ジャーナリストの藤原修平氏が説明する。
「槿令氏は2011年に知人から金を騙し取った容疑で起訴された。本人は否定しましたが罰金500万ウォン(約53万円)の判決を受けた。実はその後『罰金を払えなかった』との噂があるんです。弁護士費用にも事欠くなど生活に窮しているという話さえ出ていた。数年前から日韓歴史問題に関するセミナーを開催し、その講演料が主な収入源ともされ、今回の親日発言は注目度を高めて書籍の出版や講演活動の幅を広げる思惑があるのではと勘ぐる声もある」
インタビューで槿令氏が明かした現在の仕事は災害救助や福祉関連の非営利組織であり、それほど稼いでいる状況ではなさそうだ。
事の真偽は定かではないが、偉大な大統領を父に持ちながら、その遺志を受け継いだ姉と我が身の境遇を比べてしまったとすれば、槿令氏の胸に姉に対する複雑な感情があっても不思議ではない。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号