国内

読者や視聴者に絶対秘密 新聞やテレビが役所と結ぶ報道密約

 この6月、警視庁の記者クラブである“事件”が起きた。

 陸上自衛隊の元幹部によるロシア側への情報漏洩疑惑を一面で報じた産経新聞が、内偵捜査を進めていた警視庁公安部の逆鱗に触れ、担当記者が公安部外事1課の取材を拒否される、いわゆる「出禁(出入り禁止)」処分を食らったのである。

 新聞の読み手側からは全く見えないが、実は新聞やテレビ局には、横並びで報道するという“密約”がある。警察や検察の意向を踏まえて、報道の時期や内容を各社揃えるのだ。これを破れば、情報を与えてくれる当局から「出禁」などのペナルティを食らってしまうため“密約”破りはほとんど起こらない。イメージしやすいのは、誘拐事件などが発生した際の「報道協定」だろう。大手紙社会部記者が話す。

「報道されると被害者の身が危険に晒されると当局が判断すれば、刑事部長名などで記者クラブ側に『協定を結んで欲しい』との申し入れが行なわれる。表向きは強制ではなく、クラブ側が検討して回答し、メディア同士で『報じない』という協定を結ぶ形を取る。けれどメディア側が申し入れを拒否したケースはこれまでないはず。『人命優先』と言われれば、事件や捜査内容を検証することなく従うだけなのが実態です」

 事件ではなく、日々の統計資料の発表などでも、役人が報道発表日を決める不思議なルールがある。

 かつてはクラブ内に設置された黒板に役人が会見概要と予定日を書き込むと、自動的にその日まで報道できないという暗黙のルールがあり、「黒板協定」と呼ばれた。

 キー局報道記者の話。

「その後、黒板がホワイトボードに変わるなどしましたが、最近はそれすらなくなった。各クラブは毎日、自治体や省庁などから記者レク資料の提供を受け、新聞はそれをもとに紙面を埋めている。

 今では役所は、すぐに公表されると困る情報には、あらかじめレク資料の上に〈情報解禁 ○月○日○時〉と大書して流している」

 クラブメディアの記者たちはそれを律儀に守って報道しているのだ。

 逆に各省庁が年1回発表するような大規模調査の結果公表などが迫ると、クラブ記者は「1週間前にレクチャーしてほしい」と事前に申し入れ、準備期間を確保できるよう便宜を図ってもらうケースもある。読者には決して明かせない“密約”である。

※SAPIO2015年9月号

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン