ライフ

バレーボール小説の決定版 『2.43清陰高校男子バレー部』

【書評】『2.43 清陰高校男子バレー部』【1】【2】壁井ユカコ/集英社文庫/各562円

【評者】岸田安見(ブックファースト野田アプラ店)

 高さ2.43メートルのネットを境界として繰り広げられる球技、バレーボール。やるのも観るのももちろん面白いですが、小説で楽しむならこちらの作品!

 気遣いはうまいけど、その優しいところがたまに瑕という『本家のボン』・ユニ。思ったことをストレートに口にして周囲を凍らせるバレー馬鹿・チカ。2人の主人公ユニとチカを中心に、バレーが好きなのに背が伸びなかった主将・小田や、生徒会の権力をフルに部活に活かす策士・青木。肌が弱いために体育館でしか練習できず、週の半分は女子バレー部で練習する館野など、魅力あふれる脇役たちが、読者をこの物語にぐっと引きこんでくれます。

 だれにでもある“あの頃”―他人の才能に嫉妬したり、素直になれずにふてくされたり、ありがとうが伝えられなかったり…自分の居場所を確保できずにいたあのもどかしさがよみがえる懐かしくも戻れない日々。

 時につまずく彼らを、親のような気持ちで見守っている大人になってしまった今だからこそ、仲間と衝突し、反発し、時には逃げたりもしながら、それでも惹きつけられるもの=バレーボールに出会えた彼らが羨ましい。

「慣れてえんのやろ?」「二人しかえんのやぞ」「ほやけど」「見えてるんけ?」 など、作中の福井県の方言はあったかい感じがして声に出してみたくなります。(実際やりました。家で)

 6月には続刊も刊行されました。ユニとチカ、男子バレー部のその後を知りたくなったら、ぜひsecond seasonもお楽しみください!

※女性セブン2015年9月10日号

関連記事

トピックス

清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
引退すると言っていたのに誰も真面目にとりあっていなかった(写真提供/イメージマート)
数十年続けたヤクザが引退宣言 知人は「おめでとうございます」家族からは「大丈夫なのか」「それでどうやって生きていくんだ」
NEWSポストセブン
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト