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震災で深まった客同士の絆がつい長居させる神戸長田の角打ち

別々に来た客もすぐ打ち解けて仲間同士のように寛ぐ

 飲み頃に冷えた酒たちを、ぎっしりとおなかに収めた2台の大型冷蔵庫。これが店を入ってすぐの場所に並んで愛想よく客を迎えているため、その裏奥に広がっている『森下酒店』の角打ちワールドの全容を表から見ることはできない。

「それが隠れ家みたいでいいんだよと、多くのサラリーマンさんも、毎日のように顔を見せてくれるご近所さんも、気に入ってくれているようです。他に自慢できるのは、立ち飲みできるスペースの広さぐらいですかね」と2代目主人の森下貴央(たかひさ)さん(50歳)。

 そう、店の外側はごく普通の規模の酒屋さんにしか見えないのに、中は意外なほどに広い。冷蔵庫の左側を回って中へ入ると、右手に奥まで延びるカウンター。左手には、イスにも対応可能な四角い小テーブルが数卓、壁に沿って並んでいる。

「父が昭和42年に始めた店で、当時から立ち飲みもしていました。周囲にいくつも企業や工場があった平成の初期頃までは60~80人が同時に飲んでいることも珍しくなかったですよ。それこそみんな半身になってダークダックス飲み(編集部註・大勢の客が入るようにカウンターに向かって体を斜めに構えるスタイル)をしていました」(森下さん)

 さすがに現在は、そこまで混み合う風景はそうそう見られなくなったそうだが、当時から通い続けているというレジェンド客の姿は、少しも珍しくない。彼らは立ち飲みスタイルを頑なに守る硬派だ。

 そんな硬派レジェンドをリスペクトしながら、もう少し柔軟に飲んでいる常連客も大勢ここにはいる。

「自分も昭和からの客です。昔は比較的短時間で引き上げる人が多かったんだけど、神戸の震災以後、長居する人が多くなりました。客同士の絆が太くなったというか、より家族的になったというのかなあ。いろんな話や相談をしながら、その日の気分や体調で、立ち飲みもすれば座り飲みもするって感じですね。立って飲むことにこだわらない。ここで過ごす時間は実に豊かな気分でいられる。のんびり、至福飲みですよ」(50代、化学系)

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