昨年10月には新入部員の募集停止を発表し、保護者やOBらがいくら募集再開や野球経験者の監督就任を嘆願しても、学園の母体であるパーフェクトリバティー(PL)教団は「信仰心の乏しさ」などを理由に問題をそのままにしてきた。
「僕ら3年生は入学から引退まで、実質、監督不在の中で野球を続けてきました。部員の総意として野球経験のある監督に就任してほしいと、ずっと願っていました。しかし、昨年の秋頃にはもう諦めていましたね。いろんな噂が飛び交う中で、いつまでも決まらない。そのうち“もうええわ”となって、大人の力には頼らず僕らの力だけで野球を頑張ろうと開き直りました」
そうは言うものの、監督さえいてくれたら──と思わなかったわけではない。たとえば、春の選抜出場が懸かった昨年秋の近畿大会でのこと。近江高校と対戦したPL学園は2対2で迎えた8回表、1死三塁のピンチにスクイズを決められ、敗北した。2009年夏以来の甲子園切符は手にできなかった。
「あの時、ベンチの監督がタイムをかけて一言、『スクイズもあるぞ』と声をかけてくれていたら、失点を防げたかもしれません。でも後悔しているわけではないんです。こんな状況だからこそ僕らは結束できた。甲子園には行けなかったけど、伝統校で野球ができた。幸せな時間でした」
廃部問題に揺れる中で、その渦中にある部員にだけ芽生えた絆があった。
※週刊ポスト2015年9月11日号