金融市場がきちんと機能するためには、低い水準でもゼロではない金利で、しかも、中央銀行から民間銀行がいつでも借りられるのではなく、民間の金融機関同士で市場で金利の取引をする必要があるのです。そのためには、ゼロ金利ではいけない。これはもちろん、日本についても同じことがいえます。
米国の中央銀行は普通の金融政策に戻るための、「出口」を探ってきています。その大きなステップがゼロ金利からの利上げというわけです。
だから、米国中央銀行は、いろんな批判を受けながらも、一刻も早くゼロ金利から脱却したいのです。景気に対して引き締めを強くしたいわけではありませんから、金利を引き上げてゼロを脱却した後は、ゆっくり引き上げると思います。それゆえ、米国中央銀行は、金利引き上げというよりも、金利「正常化」という言葉を使いたがるのです。
●小幡績(おばた・せき):1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。『円高・デフレが日本を救う』など著書多数。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号