自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が解説する。
「例えばマツダのディーゼル車に使われている次世代技術は、排ガスを後処理で浄化する前の段階から基準をクリアできるほど有害物質の低減に成功していますし、今後さらなるクリーン化も期待できます。そういう点では欧州勢に比べて環境性能のレベルは高いと思います」
だが、井元氏は世界的に一般化する「“クリーン”ディーゼル」という表現には疑問を感じると話す。
「ディーゼル車はガソリン車に比べて圧倒的に燃費が良く、低速からでも力強く加速できるのが魅力です。しかし、上り坂や渋滞時、気温の変化など様々な走行シチュエーションによって実際の排ガス数値が高まることが多く、ガソリン車よりもクリーンだとは決して言えません」
そもそも、各国によってまちまちの排ガス測定方法を統一すべき――というのが井元氏の考えだ。
「日本、アメリカ、ヨーロッパとそれぞれ独自の燃費基準があり、そこで排ガス量も測定するのですが、走行条件や加速度の設定が違うため、各国の道路事情やクルマの特性を加味した規制にもなっていませんでした。
この際、VWの事件を教訓に、例えば静止状態から最高速度を出した状態で排ガス値を測るなど、あらゆるオンロード条件を世界共通でモジュール化してもいいと思います。そして、各国が実情に合わせて段階的に規制を厳しくする公平な測定法にしなければ、ディーゼル車に対する消費者の理解も進んでいかないでしょう」
VWが意図的に働いた不正行為は決して許されるべきものではない。だが、世界中の環境・エネルギー政策とも密接に関わる問題だけに、自動車業界の系列や競争を越えた対処策が必要なのかもしれない。