国際情報

格安葬儀 「これでよかったのか」と悩む人、心晴れやかな人

 かつては大勢の会葬者が訪れる葬儀が一般的だったが、近年は「家族葬」「直葬」と呼ばれる低価格・小規模な葬儀が全国的に広がっている。「安い」「アットホームでよかった」という具体的なメリットを挙げる人や、「親族からみすぼらしい葬儀をするなと責められた」や「いつまでも自宅に弔問客がひっきりなしになる」というデメリットを語る人がいるが、より深刻なのは遺族の「心」への影響だ。ライターの池田道大氏が、格安葬儀経験者の声をレポートする。

 * * *
 千葉県在住のAさん(55)が「身勝手な話ですが……」と切り出す。

「認知症の末に父が亡くなって解放された気になり、5万円ほどの最も安い直葬にしました。気持ちの整理はついていたはずですが、祭壇も供花もないなか作業が淡々と続き、火葬の際は“本当にこれでよかったのか”と胸が苦しくなりました。正直、今も心が落ち着きません」(Aさん)

 同じ直葬でも都内在住のBさん(52)は晴れやかだ。

「経済的な理由で母を直葬しましたが、葬儀社の助言もあり“納棺の儀”を追加しました。納棺師が母の亡骸を布団に包んで死化粧をし、網笠や草鞋を収めて荼毘に付しました。火葬の際はさすがに辛かったですが、旅支度を整えたおかげで心置きなく、母をおくることができました」(Bさん)

 ほんのわずかな違いで受け取り方はまるで異なる。

 葬儀ジャーナリストの碑文谷創氏が語る。
 
「葬儀で本当に大切なのは、価格や形式でなく、死者の尊厳を尊重し、死者と対面して“きちんとおくる”ことです。葬儀は弔いを通じて、死者との関係を結ぶ場であることを忘れてはなりません」

※SAPIO2015年10月号

関連記事

トピックス

滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
この笑顔はいつまで続くのか(左から吉村洋文氏、高市早苗・首相、藤田文武氏)
自民・維新連立の時限爆弾となる「橋下徹氏の鶴の一声」 高市首相とは過去に確執、維新党内では「橋下氏の影響下から独立すべき」との意見も
週刊ポスト
元・明石市長の泉房穂氏
財務官僚が描くシナリオで「政治家が夢を語れなくなっている」前・明石市長の泉房穂氏(62)が国政復帰して感じた“強烈な危機感”
NEWSポストセブン
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン