国内

カストリ雑誌 武者小路実篤、江戸川乱歩、大佛次郎らも寄稿

 終戦直後の苦しい時期、人々を元気づけ楽しませたものは「エロ」だった。GHQも黙認した「カストリ雑誌」の多様で自由な表現は、現代の雑誌にもつながっている。大阪芸術大学大学院芸術研究科長・博物館長の山縣熙氏がレポートする。

 * * *
 戦後の混乱期、貧困にあえぐ日本の大衆を熱狂させたのがカストリ雑誌である。

 カストリ雑誌とは、戦後に出版され1948~1949年に大流行した大衆向け娯楽雑誌の総称。創刊から3号ほどで廃刊となるケースが多く、3合飲めば酔い潰れる粗悪なカストリ酒になぞらえてそう呼ばれた。物資不足の中、古紙を漉き直した粗悪な仙花紙で製本し、多くが1部20~30円で全国各地の書店や露店に並んだ。1945~1946年創刊の『猟奇』『りべらる』を筆頭に全盛期には30種類以上、月200万部以上が発行されたという。

 メインの内容はエロだった。各誌は「軟派娯楽雑誌」「日本唯一の性科学画報」などと銘打ち、官能小説や女性の裸体写真の他、「婚前の性知識」「特集・男女の生殖器」など性風俗のトピックスを詰め込んだ。日本の戦前回帰と共産化を怖れたGHQも横溢する「自由な性」は問題視しなかった。

 カストリ雑誌が内包するのは戦後の強力な解放感だ。軍国主義的な言論統制により抑圧されたエネルギーが一気に解き放たれ、敗戦と引き替えに「自由」「民主主義」を手にした高揚感に満ちている。

 解放感と反権威に彩られたカストリ雑誌の求心力は強く、武者小路実篤、江戸川乱歩、大佛次郎など大家も文章を寄せた。社会評論やグラフィックを取り入れた雑多な内容は今日の週刊誌の走りでもある。

 一方で戦後のカストリ雑誌ブームは長く続かず、1949年ごろ終息した。1950年に朝鮮戦争が勃発し、日本は戦争特需から高度成長の道を突き進む。

 敗戦後の本当に貧しい数年間、逆境を逞しく生き抜く力を世に与えたカストリ雑誌は、本格的な経済復興を前にその役割を終えたのだった。

●協力/大阪芸術大学名誉教授・籔亨

※SAPIO2015年10月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大分市立中学校の校内で生徒が暴行を受けている動画が、SNS上で拡散された(Xより)
《いじめ動画の保護者説明会“録音データ”を入手》「『先生に言ったら倍返しになるから言わないで』と…」子供の不安を涙ながらに訴える保護者の悲痛な声【大分市】
NEWSポストセブン
久米宏さんが瀬戸内寂聴さんに語っていた「妻・麗子さんへの深い愛」とは(共同通信社)
〈妻と結婚していなかったら…〉久米宏さんが瀬戸内寂聴さんに語っていた「妻・麗子さんへの深い愛」 学生時代に知り合い結婚…仕事も家庭も2人で歩んだパートナー
NEWSポストセブン
高市早苗氏(時事通信フォト)
《600億円が使われる総選挙開戦へ》党幹部も寝耳に水、高市首相“チグハグ解散”背景にある3つの要因「旧統一教会問題」「不祥事」「対中関係」 “自民党軽視”と党内から反発 
女性セブン
北海道日高町で店の壁の内側から20代の女性の遺体が見つかった事件(左・店舗のSNSより)
《北海道日高市・壁に女性看護師の遺体遺棄》「お袋には何かにつけてお金で解決してもらって感謝している」バー経営・松倉俊彦容疑者が周囲に語っていた“トラブルエピソード”
NEWSポストセブン
売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕された池袋のガールズバーに勤める田野和彩容疑者(21)(左・SNSより、右・飲食店サイトより、現在は削除済み)
《不同意性交で再逮捕》「被害者の子が眼帯をつけていたことも」「シラフで常連にブチギレ」鈴木麻央耶容疑者がガルバ店員を洗脳し“立ちんぼ”強要…店舗関係者が明かした“悪評”
NEWSポストセブン
モデルやレースクイーンとして活動する瀬名ひなのさん(Xより)
《下半身をズームで“どアップ”》「バレないように隣のブースから…」レースクイーン・瀬名ひなのが明かした卑劣な”マナー違反撮影“、SNSの誹謗中傷に「『コンパニオンいらない』は暴論」
NEWSポストセブン
肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
【追悼】久米宏さん 本誌だけに綴っていた「完全禁煙」と「筑紫哲也さんとの“再会”」
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《鎖骨をあらわに予告》金髪美女インフルエンサーが“12時間で1000人以上と関係”の自己ベスト更新に挑戦か、「私が控えめにするべき時ではありません」と“お騒がせ活動”に意欲
NEWSポストセブン
美貌と強硬姿勢で知られるノーム氏は、トランプ大統領に登用された「MAGAビューティ」の一人として知られる(写真/Getty Images)
〈タイトスーツに身を包む美貌の長官〉米・ミネアポリスで移民当局が女性射殺 責任者のクリスティ・ノーム国土安全保障長官をめぐる“評価”「美しさと支配の象徴」
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
《クスリ漬けか…との声も》ギャル系美女が映っていた“異様な監視カメラ映像”とは》「薬物を過剰摂取し、足も不自由で、死んでしまう…」中国インフルエンサー(20)の住居の管理人が証言
NEWSポストセブン
秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《不敬どころの騒ぎじゃない》秋篠宮家・佳子さまも被害に…AIを用いた性的画像の被害が世界的問題に 専門家が指摘「男女問わず人権侵害」
NEWSポストセブン
中国人インフルエンサーがカンボジアの路上で変わり果てた姿で発見された(TikTokより)
「クスリを支配の道具に」「行為中に使う客層も…」変わり果てた中国人美女インフルエンサーが保護されたシアヌークビル、専門家が語る現地アングラ界隈のリアル
NEWSポストセブン