国際情報

天津大爆発被災者 補償交渉で国や勤務先から有形無形の圧力

コンテナがグニャグニャになった中心部

 8月に中国・天津で発生した大爆発事故は173人の死者を出し、日本でも大きく報じられた。現場は今、どういう状況になっているのか? 9月初旬に爆発事故の中心部に潜入したジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。

 * * *
 現場は天津の市街地から車で1時間ほどで、天津港に隣接する濱海経済区内の中心部に位置する。爆心地の出入り口は両側をそれぞれ数人の武装警察(武警)隊員によって厳重な監視体制下に置かれていたが、瓦礫の撤去作業などのために、トラックや重機などの工事車両がひっきりなしに出入りするなか、筆者の乗った車も工事車両とみなされて、すんなりと通ることができた。

 折からの雨で現場はぬかるんでおり、雨に残留化学薬品が反応しているのか、視界が全体的に薄い白い煙に覆われているように見える。武警は全員防毒マスクを装着しており、現場の瓦礫を片づけている重機やトラックの運転手は例外なくマスクを着けていた。車の窓を開けると、強い異臭を感じたほどで、筆者も慌てて車内で日本から持ってきたPM2.5(微少粒子状物質)用のマスクを使ったほどだ。

 工事車両は現場の出口付近で、浄化剤入りの水を洗浄装置で車体にかけるよう指示されていた。また、近くの川で無数の魚の死体が浮かび上がったことからも、かなりの量の化学薬品が残留しているのは明らかだ。

 これまで、中国国営新華社通信や中国共産党機関紙「人民日報」などの中国の官製メディアはこの現場に入ったことがあるが、外国人ジャーナリストとしては初めての「爆心地取材」のようだ。地元の市民によると、中に入ろうとして身柄を拘束され、カメラの画像をすべて消去された外国人ジャーナリストも少なくないという。中国当局はよほど外国メディアに現場の状況を公表されたくないらしい。

◆被災者への圧力 

 筆者はこの爆心地からわずか600mしか離れておらず、立ち入り禁止区域になっていた巨大マンション群「天津濱海海港城」の敷地内にも入ることができた。保険会社による住民向けの説明会のため、立ち入り禁止措置が一時的に解除されていたのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト