芸能

中村雅俊 オフの状態がないと『中村雅俊』ではいられない

 下積みを経験しないまま青春スターとして人気を集め、長らくそのイメージのまま演じてきた俳優で歌手の中村雅俊は、30歳を前にイメージと大きく異なる役を演じる機会を得たことで芝居自体が変わったという。様々な役を演じ、経験をしてきたことで得た、「中村雅俊であること」について語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 中村雅俊は1979年のテレビドラマ『三十秒の狙撃兵』(テレビ朝日)でこれまでの青春スターのイメージから一転、37歳の若さで自殺したCMディレクター・杉山登志を演じている。

「あの作品は今までやってきたドラマと違う気がしました。華やかな栄光と挫折が本当にジックリと描かれていまして。ドキュメントのようなドラマで、初めて演じる喜びや表現する楽しさを感じたように思います。

 多少、こなれてきたというのもあるんでしょう。デビュー当時はアップアップで、『俺たちの旅』あたりでようやく『この道で行こう』と決めることができたくらいでしたから。

 そういう実績もあって、客観的に自分を見られるようになりました。それで芝居自体も変わっていったように思えます。

 たとえば、感情表現がスムーズにできるようになった。当たり前のことなんですけど、それまでは気持ちを作って出すという作業の工程が分からなかったんです。顔だけ作ればそこから気持ちも作れるのか、それとも気持ちを作れば顔に出るのか。かつては、それすらよく分かりませんでした。それが段々とオンエアを客観的に観ながら『ああ、こういう気持ちでいたら、こんな顔をしているんだ』と見えるようになっていったんです。

 当時は『ずっと青春ものをやってますけど、この先どうするんですか』とよく質問されました。その度に『俺が四十、五十で俳優をやっていても青春スターと呼ぶ人もいないでしょう。時間が経てば自ずとやるものも見え方も変わってきます』と答えていました。『ふれあい』を歌う時は『歌う青春スター』って自分で言っていましたが、そんなのは冗談ですから」

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン