2015年、多くの名選手が引退した。なかでも、32年という長い現役生活を終えた中日の山本昌投手(50)は、引退会見で「野球を辞めるという選択肢は今回が初めて」と語っていた。小学3年生で始めた野球を辞めたいと思ったことは一度もなかったという。
「多くの人の支えがあったからこそ続けられたと思います。とくに両親には感謝しています。高校時代、僕が夜の10時頃に帰ってきても、ドロドロのユニフォームを洗濯カゴの中に入れておけば、母親が朝の6時の朝練までにアイロンをピシッとかけたユニフォームと弁当を用意してくれた。
もう他界しましたが、オヤジも同じです。僕は小、中と補欠だったのに、しょっちゅう試合を観に来ていた。保険の外交員で、集金の合間に時間を作って来ていたんです。友達から“おまえの親は仕事してないの?”とからかわれましたが、今思えば僕のために必死に時間を割いてくれたことに感謝しています」
人生の大半を野球に捧げて来たが、今後の進路は今のところ未定だという。
「まずは趣味ですね。クワガタの飼育は奥さんが反対しているので諦めますが、ラジコンは再開します。でも、僕の一番の趣味は野球だから、引退後もずっと野球に携わっていたい」
●山本昌(やまもと・まさ)/1965年神奈川県生まれ。1983年、日大藤沢高校からドラフト5位で中日ドラゴンズに入団。最多勝に3度輝き、1994年には沢村賞を受賞。通算成績は581試合に登板、219勝165敗5セーブ、防御率3.45。
撮影■杉原照夫
※週刊ポスト2015年10月30日号