ライフ

すき焼きに白菜はありかなしか 東西の有名店を取材してみた

すき焼きに白菜の自由を

 鍋が恋しい季節になってきた。そのひとつすき焼きの具材について、フリー・ライターの神田憲行氏が取材した。

 * * *
 唐突だが、みなさんはすき焼きに白菜を入れるだろうか。私はすき焼きの汁を吸ってくたくたになった白菜が大好物で、すき焼きは白菜を食べるためにあるものではないか、ぐらいに思っている。

 ところが関西から東京に出てきて、すき焼きに白菜が入っていないお店にびっくりした。周囲の人に聞いても「すき焼きに白菜なんて邪道じゃないの」とおかしな顔をされたこともある。ネットで検索しても

「白菜から出る水分で味が薄くなる」

「ちゃんとしたすき焼きのお店では白菜はいれません」

 という意見があって、かなり疎外感を味わっていた。

 すき焼きの食べ方には割下を使う・使わないの関東関西文化の違いが有名だが、白菜の有無にも文化の壁があるのだろうか。

 ところが関東にも白菜を入れる地域を見つけた。群馬県である。ネットではやたら「日本の秘境」扱いされている群馬だが、昨年9月から「すき焼き応援県」と名乗りを挙げて、すき焼きを全力で推している。なぜ群馬がすき焼きかというと、すき焼きで使われる具材について、上州和牛や下仁田ネギといった有名食材から全国一位のこんにゃく、春菊などなんとその全てが群馬県産でまかなえるからで、「すき焼き自給率100%」という。そこに白菜もちゃぁんと入っているのだ。

「すき焼き応援県」プロジェクトを推進する同県農政部ブランド推進課よると、

「群馬では白菜の生産高が全国5位位内に入るくらいなんです。それで群馬ではすき焼きに白菜を入れる家庭もあります」

 では「ちゃんとした」お店では白菜は入れないのだろうか。東京のすき焼きの名店といえば「今半」さんである。取材したところ意外なことがわかった。

「うちは入れません。白菜から水が出てしまうからです。60年前にのれん分けしたころから入れていないと思います」(人形町今半)

「いつからは不明ですが、少なくとも先代から白菜を入れています。茎の部分を少なくして、さっと鍋からあげるので水っぽくなって味を損ねることにはならないようにしています」(浅草今半)

 なんと今半系でも、入れたり入れなかっりなのだ。では関西は必ず白菜を入れるのか。創業が明治14年という心斎橋の「すき焼き 北むら」さんに伺うと、

「うちはすき焼きの『焼き』の部分に気をつけているので、水っぽくなる野菜は入れないんです。ただお客さんからリクエストがあれば、白菜もご用意するようにしています」

 白菜の有無は文化も店の格も関係ないのである。

--すき焼きに白菜を入れたら邪道ですかね?

「うーん、『すき』焼きいうぐらいですから、好きにしはったらええんちゃいますかね(笑)」(北むら)

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン